美容師に依頼し、後輩の後頭部に「ギザギザ線と丸模様」こっそり入れさせる 京都府警で珍不祥事…法的責任は?

美容師に依頼し、後輩の後頭部に「ギザギザ線と丸模様」こっそり入れさせる 京都府警で珍不祥事…法的責任は?

京都府警捜査3課に所属する男性警部(50代)が、後輩警察官の髪形を本人の意に沿わないようにして不快にさせたとして、本部長訓戒の処分を受けたと報じられている。処分は9月26日付。

報道によると、警部は2024年8月、同じ事件の捜査に関わっていた後輩警察官を行きつけの美容室に誘った上で、事前に美容師に依頼して、後頭部の刈り上げた部分にギザギザ線や丸模様を入れさせたという。同僚から髪形を指摘され、部署の上司が事情を聞き取り発覚したようだ。

警部は「職場を活気づけようという思いで誘った。悪ふざけがすぎた」と説明したようだが、勝手に髪形を変えられた本人としてはたまったものではない。はたして「悪ふざけ」で済むのだろうか。刑事事件に詳しい清水俊弁護士に聞いた。

●「暴行罪」にとどまらず「傷害罪」になる可能性も

──勝手に他人の髪形を変更することは何らかの犯罪になるのでしょうか。

本人の意に反して髪を切って髪形を変更する行為は、人の身体に対する有形力の行使にあたるため、「暴行罪」に該当します。

刈り上げた部分にギザギザ線や丸模様を入れさせたというのが、刈り上げる長さを調節して模様にしたということであれば、同じく暴行罪の中で評価されると考えられます。

なお、髪を抜かれれば傷害ですが、髪を切られただけでは傷害とは評価されないのが通例です。ただ、過去には女性を丸刈りにした事案で傷害罪の成立を認めた裁判例もありますので、行為態様など具体的な事情によっては髪を切る行為が「傷害罪」として処罰される可能性もあります。

●美容師の責任は?

──今回のケースでは警部本人が模様を入れたわけではないようですが、それでも成立するのでしょうか。

警部本人が実際に手を下したわけではありませんが、美容師という他者を利用して暴行行為に及んでいるため、警部本人に暴行罪が成立することに特に異論はないと思います。

問題は美容師に共犯が成立するか否かですが、「事前に美容師に依頼した」際の具体的な内容によって変わってくると考えられます。

もし、被害者の意に反して髪形を変更する、模様を入れるといった内容で事前に打ち合わせをしていたのであれば、暴行に関する共謀があるとして共犯が成立し得ます。

他方、「本人の意向だ」と真に騙されていたなどの事情があれば、警部本人のみ単独犯(間接正犯)となる余地もあります。

──民事上の責任はどうでしょうか。

民事上は、警部本人には故意による不法行為が成立し、損害賠償責任が発生します。美容師についても、仮に騙されていたなどの事情があったとしても、そこに過失が見出せれば、警部と同じく不法行為が成立します。

【取材協力弁護士】
清水 俊(しみず・しゅん)弁護士
2010年12月に弁護士登録、以来、民事・家事・刑事・行政など幅広い分野で多くの事件を扱ってきました。「衣食住その基盤の労働を守る弁護士」を目指し、市民にとって身近な法曹であることを心がけています。個人の刑事専門ウェブサイトでも活動しています(https://www.shimizulaw-keijibengo.com/)。
事務所名:横浜合同法律事務所
事務所URL:http://www.yokogo.com/

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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