現役教師のズバッと回答に「泣いた」の声。SNSで話題のエピソードを多数収録『天才じゃない私たちが輝くために』

すべての人に伝わるよう、抽象的なものを言語化

――本作は教師としての実話をベースに、生徒さんたちの悩みや、それに対する夏目にーにさんからのアドバイスが描かれています。この作風で描こうと思われたきっかけを教えてください。

夏目にーにさん:これまでも色々なコンセプトで描いていたのですが、このスタイルで描いた漫画が一番ポジティブな反響をもらえたからです。エピソード17「ブレんな」でも描いたのですが、反響があったということは自分のストロングポイントがあるのだと素直に受け止めて、飽きられるまで描き切ろうと思う所存です。


――美術教師をされる中で、数えきれないほどの生徒さんとのエピソードがあると思います。その中から、漫画として描き起こすエピソードはどのようにセレクトしていますか?

夏目にーにさん:直感で、「このテーマは面白そうだな!」というものから順に描いています。何となく次はこれを描こうと決まっていても、生徒と話したりして「絶対こっちの方が描きたいな!」と思ったらすぐプロットを書きます。本質的で賛否を呼びそうなものが理想ですが、なかなかそういうテーマに出会うことは少ないです。

――どのエピソードも絵を描くことだけにとどまらず、仕事やスポーツ、勉強などあらゆる場面に当てはまる内容だなと感じました。

夏目にーにさん:私の漫画は美術に関する話が軸ですが、「どの世界にも通ずる話だな」と思う内容にしています。教育は正解がなくて多様で抽象的で、絵の世界も同じようなものですよね。でも、必ずベターなものは存在すると考えています。それを言語化するのが楽しいし、人にも伝わってくれるだろうなと感じています。

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高校の美術部が主な舞台ではありますが、作中に登場するセリフの数々は、絵を描いていない人にも、大人にも、すべての人に向けられた言葉なのですね。読後に、なんだか自分ももうちょっと頑張れそうと思わせてくれる作品です。

取材・文=松田支信

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