患者さんの診療をサポートする歯科助手にとって、専門的な歯科医療用語はなかなか覚えられないですよね。そこで今回は、新米歯科助手の方向けに、よく使われる歯科医療用語をわかりやすく紹介します。
この記事を参考に、日々の業務の中で用語と照らし合わせながら、少しずつ覚えていきましょう。きっと、患者さんとのコミュニケーションや、歯科医師・歯科衛生士との連携がスムーズになりますよ!
新米歯科助手のための歯科医療用語
一般知識
用語:読み方(英語表記)でご紹介します。
Pt:ぺいしぇんと (Patient)
患者さまのこと。
表麻:ひょうま (Surface anesthesia)
表面麻酔の略で、注射の針の痛みを和らげるために使う、塗る麻酔のこと。
浸麻:しんま (Infiltration anesthesia)
浸潤麻酔の略で、局所的な麻酔のこと。
伝麻:でんま (Conduction anesthesia)
伝達麻酔の略で、より広い範囲にしっかりと麻酔の効力をもたせたい場合に用いる麻酔法のこと。奥歯の治療や、親知らずの抜歯の際に使用されることが多いです。
WSD:だぶりゅーえすでぃー(wedge shaped defect)
歯の根元がくさび状に欠損している状態のこと。 歯ぎしりや過度なブラッシングが原因とされています。
Hys:ひす(Hyper sensitivity)
象牙質知覚過敏症のこと。冷たいものや歯ブラシなどの刺激がしみるような症状があります。
ペリオ:ぺりお(Periodontology)
歯周病のこと。
カリエス:かりえす(Caries)
むし歯のこと。C1、C2と数字を組み合わせてむし歯の進行具合を表します。
pul:ぷる(Pulp)
歯髄炎、つまりむし歯による歯の痛みが出ている状態のこと。神経にまで到達するむし歯の場合、プルを引き起こしてしまいます。
per:ぺる(Periodontitis)
神経を除去した歯の根の先に炎症がおきている状態のこと。前回の根の治療が不十分、もしくは根の中が感染するとペルになります。
サイナストラクト/フィステル:さいなすとらくと/ふぃすてる(Sinus tract/fistel)
歯の根が感染し膿が溜まり、歯茎にニキビのような出来物ができた状態のこと。フィステルは昔の呼称。
P急発:ぴーきゅうはつ: (Acute purulent periodontitis)
歯周病により、膿が溜まり大きく腫れて痛みが出ている状態のこと。
HRT:えいちあーるてぃー(Horizontal Retinal Tooth)
親知らずが半分埋まっている半埋伏歯(はんまいふくし)のこと。清掃不良により、腫れたりむし歯になるリスクがあるため、将来的に抜歯を勧めるケースが多いです。
HIT:えいちあいてぃー(Horizontal Impacted Tooth)
親知らずが横向きになって埋まっている水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)のこと。
Perico:ぺりこ
親知らずが清掃不良などで炎症を起こしている智歯周囲炎のこと。清掃方法の指導、もしくは抜歯を勧めます。
デンタル:でんたる
部分的なレントゲン撮影のこと。根の状態やむし歯の有無、歯槽骨の形態などの確認に用います。
パノラマ(パントモ) :ぱのらま
全体的な口腔内のレントゲンのこと。上下顎の状態や顎関節、下歯槽管の位置の把握が可能です。
一般歯科治療関連
C処置:しーしょち (Caries treatment)
Cとはむし歯のことで、むし歯治療のことを指します。
CR:しーあーる (Composite Resin)
むし歯をレジンで治す治療法です。主に前歯の歯と歯の間、奥歯の噛む面のむし歯治療に適しています。
感処:かんしょ
感染根管治療の略で、歯の根が感染している時に行われる治療法です。
麻抜:まばつ
麻酔をして歯の神経を抜く処置のこと。抜髄とも言います。
根管治療(RCT):こんかんちりょう(あーるしーてぃー)
歯の根をきれいに掃除する 治療のこと。掃除が不十分であった場合、再発や予後不良の恐れがあるためきちんと治療する必要があります。
根管充填(RCF):こんかんじゅうてん(あーるしーえふ)
根管治療の次に行う処置で、きれいになった根の中にお薬を充填する治療法です。根の先までお薬がきちんと届いているか、確認のレントゲンの写真も必要です。
Imp:いんぷ (Impression)
印象採得と呼ばれ、歯の型取りのことを指します。
対合:たいごう (Occlusion)
治療歯と噛み合う歯のこと。(本印象と反対の歯)
アルジネート:(Alginate)
型取りをする材料のこと。
寒天:かんてん (Agar)
アルジネートと一緒に使われ、精密に型取りしたい部分に使用する材料のこと。主に本印象で使用されます。
バイト採得:ばいとさいとく (Bite registration)
上下の歯の噛み合わせを採得すること。
シリコン印象:しりこんいんしょう (Silicone impression)
寒天アルジネートよりも精密に印象採得したい時に用いる型取りの方法です。主にセラミックなどの保険外治療の時に使用されます。
TF:てぃーえふ (Temporary Filling)
試適のことで、義歯などの補綴物の仮合わせをします。
SET:せっと
補綴物を口腔内へ装着、もしくは義歯の完成時のこと。
咬調:こうちょう
噛み合わせを調整すること。SET時や早期接触がある場合に行います。
EXT:えきすと (Extraction)
抜歯のこと。
抜糸:ばついと
縫合した糸を取ること。
SP:えすぴー(Spulung)
消毒のこと。
補綴(ほてつ)関連
In:いんれー (Inlay)
詰め物の一種で、部分的な小さな詰め物のこと。
Cr:くらうん (Crown)
詰め物の一種で、歯全体を覆う被せ物のこと。
Br:ぶりっじ (Bridge)
欠損の歯を補う補綴物のひとつです。両隣の歯を支えにして、橋渡しのような被せ物のこと。
FD :ふるでんちゃー (Full denture)
歯が一本も無く全床義歯のこと。
PD:ぱーしゃるでんちゃー (Partial denture)
部分床義歯のこと。1本でも歯が残っている場合はPDと称します。
FMC:えふえむしー (Full Metal Crown)
銀歯のクラウンのこと。
CAD/CAM:きゃどきゃむ
保険でできる白い被せ物、詰め物の材質のこと。樹脂とセラミックが混ざった素材です。
AF :えーえふ(Amalgam filling)
アマルガム充填のこと。現在の治療では有害とされているため取り扱いは見られませんが、患者さまの口腔内には多く見られます。
歯周病治療関連
P処置:ぴーしょち (Preventive treatment)
Pとは歯周病のことで、歯周病治療のこと全般を指します。
EPP:いーぴーぴー(Examination of Periodotal Pocket)
歯周病の検査のことで歯と歯茎の境目にある溝の深さが何ミリあるのか計測する検査のこと。
プローブ:(Dental probe)
歯科探知子のこと。 EPP時に使用する目盛のついた器具。
BOP:びーおーぴー (Bleeding On Probing)
歯周ポケット検査時に出血すること。炎症がある歯茎の記録に使います。
SC:えすしー (Scaling and Curettage)
歯の表面に付着した歯石や歯垢を超音波の器具や専用の器具を用いて除去する処置です。
SRP:えすあーるぴー (Subgingival Root Planing)
歯科衛生士が専用の器具を用いて、歯の根についた歯石や感染歯質を除去する処置のこと。
TBI:てぃーびーあい (Tooth Brushing Instruction)
歯磨き指導のこと。
OHI:おーえいちあい(Oral Hygiene Instruction)
歯磨き指導や間食指導など、生活習慣全部を含めた口腔内改善のための指導のことを指します。
PMTC:ぴーえむてぃーしー (Professional Mechanical Tooth Cleaning)
歯科医院で行う、専門家による機械的歯面清掃のこと。研磨剤のペーストなどを用いて、歯面に付着した歯垢やバイオフィルムの除去を目的とします。
F塗布:えふとふ (Fluoride application)
歯を強化する目的でフッ素を塗布する処置のこと。
FOP:えふおーぴー(Flap Operation)
歯周外科治療の一つで、歯茎を切開し歯茎の中の根についた歯石の除去および根面を滑沢にする目的として行われます。
歯科医療用語を覚えるメリット
歯科医療用語は、最初は難しく感じるかもしれませんが、日々の業務の中で意識的に触れていくことで、少しずつ覚えていくことができます。今回紹介した用語を参考に、ぜひ積極的に学んでいきましょう。
わからないことがあれば、先輩の歯科助手や歯科医師・歯科衛生士に積極的に質問することも大切です。歯科医療用語を覚えることで、先生や歯科衛生士さんとのコミュニケーションが円滑になり、より質の高い診療に貢献することができます。
これからも歯科助手としてスキルアップを目指して、頑張ってください!
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この記事を監修してくれたお医者さん
日本歯科医師協会認定医
越智英行
略 歴
昭和大学 歯学部 卒業/昭和大学大学院 歯学研究科 臨床系歯科麻酔科学 修了/昭和大学 歯学部 全身管理歯科学歯科麻酔科 助教/医療法人社団コンパス 常務理事
保有資格
歯科医師/歯学博士/日本口腔外科学会 認定医/日本外傷歯学学会 認定医
配信: 医科歯科健診コラム
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