●筆者の新聞記時代の経験に合致
今回の調査結果は、自治体の担当者が記者室に張り付いて記者の出入りを厳密にカウントして回答したものではなく、主観的な意見に頼らざるを得ない部分があったという。
ただ、このアンケート結果は、2024年1月まで毎日新聞の記者だった筆者の経験にも沿う内容だ。
というのも、筆者が2015年4月に新入社員として配属された初任地の青森支局(青森市)には当時、支局長とデスク、記者5人がいたほか、弘前市と八戸市に「通信部」と呼ばれる記者1人の取材拠点があった。
しかし、本社への異動をはさんで2021年春に赴任した宮崎支局(宮崎市)では、すでにデスクがいなくなり他県の支局と一緒にまとめられていた。
宮崎県内の通信部も削減されており、新人記者が支局に配属されなくなっていた。2023年春に離任する際には宮崎支局の記者は支局長を含めて3人にまで減っていた。
そのような状態だったため、以前は比較的手厚くカバーしてきた宮崎県庁の記者室に筆者が常駐することはなく、県庁所在地の宮崎市の記者室にも週に数回だけ資料を取りに行くだけとなっていた。
宮崎県で2番目に人口が多い都城市ではすでに通信部が閉鎖されていたため、1カ月に一度行くか行かないかぐらいの頻度でしか都城市役所にある記者室を訪れなかった。そのため、いつも記者室の机に山積みになった市の資料を紙袋に入れて宮崎支局に持ち帰っていたことを思い出す。
こうした取材網の縮小は他の多くの報道機関も同様の傾向にあり、地元紙も県内の人口が少ない自治体から記者を減らしているという話を耳にしたことがある。
筆者が今年1月末に毎日新聞を退職した際には、青森支局の2つの通信部はともに閉鎖され、記者も3人ほどに減っていたと記憶している。
毎日新聞だけでもわずか数年でこれほど変化していることから、報道機関全体としてはさらに地方から急激に記者がいなくなっている事態が推測される。
●自治体職員も「行政監視」の弱体化を懸念
地域から記者がいなくなることは、その地域に関するニュースが減っていくことを意味する。
Shireruが今回実施したアンケートで注目すべきは、自治体の職員自体がこの傾向に危機感を抱いているという点だ。
記者クラブについて自治体が感じている課題を自由回答で尋ねた質問には、次のような「マスコミの弱体化」を挙げる回答が多かったという。
<小さな町の情報は取り上げられる頻度が少なくなったと感じる>
<地方自治体のリリースに対応できないほど、報道機関自体が人手不足であると感じる>
<報道機関の人員が不足している。広報担当者と記者が顔を合わせる機会が減り、お互い満足のいく報道にならないことが多いと感じる>
<地方行政担当であっても、全国的・国政的な事案に係る取材活動の割合が多くなってきていると思われ、地元独自の事案の取材が少なく感じられる>
さらには、役所の職員が広報する対象といった見方ではなく、一市民としての目線から報道機関の衰退を懸念する声も寄せられたという。
<一記者の(記者室での)滞在可能時間は減っており、「行政監視」という意味が薄れているように感じる>
配信: 弁護士ドットコム