「出張中は一日三食駅弁です」 駅弁とB級グルメに魅せられた弁護士の"偏愛"

「出張中は一日三食駅弁です」 駅弁とB級グルメに魅せられた弁護士の"偏愛"

出張や旅行で食べた駅弁やB級グルメを法律事務所のブログに10年以上書き続ける弁護士がいる。その入れ込みようは「駅弁を食べるため、わざわざ遠方の仕事を選ぶ」ほど。

ただ、新型コロナの影響や司法手続きのIT化が進む中で、弁護士の仕事から「移動」が減りつつある。

京都に事務所を構える小沢一郎弁護士は、そのような便利な恩恵も「駅弁好きにとっては死活問題です」と話す。

駅弁をつつきながら、弁護士の駅弁愛を聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●「駅弁ブログは一切仕事に結びつきません」

小沢弁護士は、外資系の生命保険会社勤務などを経て、弁護士資格を取得。今は相続分野の案件に力を注ぐ。

依頼者からの法律相談に対応するだけでなく、メガバンクや不動産デベロッパーから頼まれて、事業承継や遺産分割の講演やセミナーに足を運ぶ。

小沢弁護士の事務所のブログでは、相続分野などの法的なテーマを発信しているが、同じブログの中で駅弁やB級グルメを2013年から紹介してきた。

「自筆証書遺言作成のワンポイントアドバイス」「土地国庫帰属法とは」などの記事にまじって、「かにさばしじみのもぐり寿司@松江駅」「JR九州×TVアニメ鬼滅の刃コラボ特製弁当」といった記事が幅をきかせている。

とはいえ、駅弁ブログは仕事にはまったく結びつかないという。

「相続問題や離婚問題で揉めてヘトヘトにお疲れの方が、『駅弁を好きな弁護士なら依頼しましょう』とは思いませんよね。ブログを読んだ人から仕事が入れば駅弁やB級グルメを堂々と経費にしますよ(笑)。そんなことは、この10年で一度もありません」

サイトのウェブデザイナーからは「お客さまに読んでもらっても意味のないことを事務所のブログに書かないで」と小言を言われながらも、「好きだから」の一点張りで書き続けている。

●遠くの仕事が入ると「やったー」

「お腹が減ってなくても買ってしまう」「出張の移動中のために1個、ホテルで晩酌の肴にするために1個、翌朝の食事のために1個。一度に2つ3つ買うこともある」。

そんなスタイルで駅弁を買う小沢弁護士。今回の取材で訪れた東京駅の催事場も「関東の出張では必ず寄る駅弁の狩場」だという。

この日は初めて味わう「天下とり御飯」を手にした。

「これは愛知県の松浦商店が調製元(駅弁のメーカー)で、名古屋の元祖あんかけスパゲティヨコイとのコラボ商品です」

公園で弁当を頬張りながら、よどみなく語られる駅弁愛。駅弁の「掛け紙」はコレクションしている。

最近では1500円や2000円で売られることも多く、通常の弁当と比べて高額な印象だ。それでもなぜ駅弁にひかれるのか。

「電車や新幹線の移動が好きなことはもちろん、駅弁の魅力は、その地方の特産品が駅弁の一つに凝縮されていることにあります。街に出て飲食店で名物を一通り食べようとするとそれなりのお金も時間もかかりますが、駅弁だとお手頃です。駅弁と同じマーケットはコンビニ弁当などではなく、飲食店ではないかなと思います」

西日本を中心に北海道から鹿児島まで回り、駅弁の記事は今月10月時点で合計650件を数える。1つの記事で2〜3個の駅弁を紹介することもあり、食べた駅弁の数は把握できていない。なお、B級グルメの記事はおよそ860件だ。

講演やセミナーでの地方行脚は新型コロナ流行で減少したが、多いときには年間100件を超えていた。クライアントには「一番遠くのお仕事をお願いします」と頼み、わざわざ遠方を選んでいたという。

弁護士として取り組む相続分野の事件でも、相手方の居住地にある家庭裁判所を陸路で訪れることもあり、そのたびに京都から電車に揺られて、各地の駅弁やご当地グルメを腹におさめてきた。

オンラインでの仕事が増えた今では、仕事ではなく、オフの時間に「駅弁旅行」を堪能している。「最近も青春18きっぷを使って、沼津、広島、岡山、九頭竜湖、紀伊半島を回ってきました」

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