高齢者の歯科受療の課題 | 口腔トラブルの発症率は上がるのに歯科受療率が低くなるのはなぜ?

高齢者の歯科受療の課題 | 口腔トラブルの発症率は上がるのに歯科受療率が低くなるのはなぜ?

高齢者の歯科受療の実態

高齢化が進むにつれて、歯科医療においてもさまざまな課題を抱えています。そのひとつが、歯科医院へ通院できない高齢者の増加といった問題です。比較的最近までは、歯科診療は外来が中心でした。ところが歯科医院における外来の受療率は、70〜74歳をピークとして、そのあとは急速に低下していく傾向にあります。高齢になると口腔トラブルが生じやすいにもかかわらず、通院できないために受療率は低くなっていくというのが実態でした。

高まる訪問歯科診療の必要性

そこで今ニーズが高まっているのが、訪問歯科診療です。訪問歯科診療とは、要介護高齢者など通院が困難な人を対象に、自宅や施設へ歯科医師や歯科衛生士が訪問して歯科診療を行う制度のことです。基本的に、外来で行われる診療内容と同様の診察・治療が受けられます。

進まない高齢者への訪問歯科医療対応

高齢化に伴い、要支援・要介護者は年々増加しています。厚生労働省発表の介護保険事業状況報告の概要 (令和4年2月暫定版)によると、国内の要介護(要支援)認定者数は、2022年1月末時点で、689万人に上るということです。要介護者の多くは、訪問歯科診療の潜在患者と考えられます。ところが実際、介護施設への入居者や自宅で介護を受けている方々に、訪問歯科診療が広く浸透しているかというと、そうとはいえません。ニーズがあるものの、要介護高齢者に向けた訪問歯科医療への対応は進んでいない状況です。

訪問歯科診療という選択肢

口腔環境や口腔機能が維持され、お口が健康な状態であることは、口腔トラブルの防止だけではなくQOLの向上にもつながります。特に要介護状態の高齢者にとって、口からごはんを美味しく食べることは、大きな生きがいのひとつです。また食事だけでなく、身近な人たちとの会話を楽しむことも大切といえます。

そのために欠かせないのが口腔機能の維持であり、適切な歯科診療が欠かせません。たとえ外来受診が困難な状態になった場合でも、訪問歯科診療という選択肢があることを知っておかれるとよいでしょう。

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