関東で民家での強盗事件が相次いでいることを受け、警察庁が10月18日に公開した動画が話題となっている。
“闇バイト”などで事件に関わろうとしている若者に警察庁の生活安全企画課長が犯行グループからの離脱を促す内容で、「勇気を持って抜け出し、すぐに警察に相談をしてください。警察は相談を受けたあなたやあなたのご家族を確実に保護します」と呼びかけている。
X(旧ツイッター)に投稿されたこの動画はすでに200万近く表示されている。
また、この動画を見た人から「実際に強盗をやる前なら罪にならない事も知らせるべき」といった書き込みがされ、2万回以上リポストされている。
今回警察庁が呼びかけた「保護」では具体的にどのような対応が取られるのか? また、保護されたら罪に問われることはないのか?
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する澤井康生弁護士に聞いた。
●警察の「保護」とは?
ーー「あなたや家族を保護する」という警察庁のメッセージは具体的にどのような対応をとってもらえる?
日本では米国のような証人保護プログラム制度がないことから、警察が特別に保護を行うという制度はありません。
そのため、まずは犯罪者集団から危害を加えられそうになっている対象者について、自宅のパトロールを強化したり、防犯ブザーを提供したりするなどして防犯対策を強化することが考えられます。
また、危害を加えられる恐れが顕著であるという場合には同人の同意のもとに、任意捜査の一環として退避場所を提供することも考えられます。
さらに、警察官職務執行法4条には対象者の生命身体に危険が生じる危険な事態が生じた場合にはこれを避けるために対象者を避難させることができる旨の規定があることから、同規定に基づいて対象者を避難させることも考えられます。
●警察庁幹部のメッセージは「異例」
ーー今回のように警察庁の幹部が自らメッセージを発することは異例?
幹部自らメッセージを発するのはあまり見たことがないので異例だと思います。
闇バイトによる強盗事件は末端の実行犯をいくら逮捕したところで首謀者にたどりつくのはとても難しく、強盗犯人を事後的に検挙しているだけでは強盗事件を未然に防ぐことはできません。
強盗を未然に防ぐ対策の1つとして、闇バイトに応募しようか迷っている若者に対して、闇バイトに応募しないように働きかける方法は一定の効果はあるのではないでしょうか。
特に今回の動画は若者が多く見るであろうSNSをメインに配信されているので、闇バイトに手を出そうか迷っている若者に対し届きやすいと思います。
配信: 弁護士ドットコム