サントリーは、「物流2024年問題」など輸送能力が不足するおそれがある中、いままで通りに運べなくなるリスクに対応するため、限られたトラックで効率的に運んでもらう取り組みを行っている。飲料は他の食品と比べても製品の重量が重く物量も多いため、多くのトラックが必要とされる。サントリーはドライバーを“待たせない”取り組みなどで、課題解決を図る。
サントリーは10月18日、浦和美薗配送センター(埼玉県さいたま市)で「物流取り組み説明会&配送センター見学会」を開催した。浦和美薗配送センターは、大和ハウス工業と協働で“飲料に最適な仕様に設計”しており、2021年の稼働開始から、トラックドライバーを待たせないさまざまな工夫を行っているという。
サントリーホールディングス物流調達部の塚田哲也部長は次のように語る。「限られたトラックで効率的に運ぶためには、“運ぶ距離を短くする”“積載効率を上げて台数を減らす”“ドライバーさんを待たせない”ことが重要。当配送センターは豊富なバース(積み下ろしなどのスペース)やDX施策などにより、平均滞留時間(荷待ち時間+荷役時間)は30分強となっている」。
説明する塚田部長
国土交通省が発表している国内平均の荷待ち時間は1時間30分を超えており、荷役時間と合わせた滞留時間は3時間を超えるケースも存在しているので、同センターでの所要時間は非常に短いことがわかる。
浦和美園配送センターの“待たせない”工夫は、まず設計面で3つある。1つめは、同時に多数のトラックを受け入れることができる通常の約3倍規模のバース数だ。敷地が広く、どのバースに、どのトラックが入るかあらかじめ計画可能なため、前日のうちに積み込む荷物が準備できる。
2つめは、仮置きスペースが豊富にあるため、積み込む商品を事前に集めてトラックが到着したらすぐに積み込める状態にできるのは大きな時間短縮となる。3つめは、飲料用トラックはウイング式(左右開閉型)が一般的なため、積み込みやすさを考えて床面低床タイプのフロアにしている。
運用面では、24時間稼働のため、積み込み荷物を前夜のうちに準備することができる。そして、自動受付システムにより入出庫時の受付から、呼び込みまでの時間を短縮できるという。
無人で動くフォークリフト(AGF)は4台稼働
サントリーロジスティクス埼玉支店の小島達也リーダーによれば、これらの取り組みにより、受付の5~10分の短縮と、待機時間を大幅に削減できるため、ドライバーは、一般的なセンターと比べてトータルで約1時間は早く退場が可能になったという。
トラックドライバーから浦和美園配送センターは好評で、「格段に待ち時間が少ないのでノンストレス」「車両が集中してもバースが豊富なので渋滞なく接車できる」などの声が寄せられている。
塚田部長は、今後について次のように話した。「高砂工場(兵庫県高砂市)を生産拠点としてだけでなく、西日本エリアでの物流拠点の機能強化を図って長距離輸送を減らす取り組みも行う。そして、浦和美薗配送センターでの取扱量は当社の中で5%程度にすぎない。当センターで得られたトラックを“待たせない”知見やノウハウを活かし、他の配送センターにも展開していきたい。また、なかなか個社だけでは対応できない物流課題もあるので、飲料業界の中で連携したり、配送先の流通企業との協働も積極的に考えていきたい」。
また、積載効率を上げて台数を減らす取り組みでは、これまでのデザイン重視の容器形状から、積載効率が高い容器形状にも取り組んでいる。今年は、「GREEN DA・KA・RA」「伊右衛門 濃い味」「サントリー烏龍茶」など、くぼみを減らし縦長で四角い積載効率が高い容器の採用を始めた。商品設計に運びやすさの視点を入れた取り組みだ。
サントリーの飲料事業は、2023年に約4.5億ケースで清涼飲料市場全体(約18億ケース)の約25%を占めている。同社のトラック輸送量は業界トップクラスであり、対策が急務となっていた。同社は“待たせない”工夫を広げることなどで物流問題の課題解決に取り組んでいる。
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB