弁護士ドットコムには飲食店の店主から“食い逃げ”に関する相談が寄せられている。
ある店主は客から「持ち合わせがないので家まで取りに来て欲しい」と言われ、自宅らしき場所までついて行ったものの「数分で戻る」と言った客が戻って来ず、「1時間ほど待ちぼうけ。その後音信不通です」という憂き目にあったそうだ。
このような「食い逃げ」は、どのような罪に問われてしまうのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●逃げた状況次第では犯罪にならない場合も!?
──「食い逃げ」はどのような犯罪になるのでしょうか。
食い逃げは昔からありますが、法的にはケースバイケースで犯罪の成否や罪名が異なります。主なパターンとして、(1)はじめから払う意思がなかった場合、(2)注文して食べた後にお金がないことに気づいて逃げてしまった場合について検討します。
まず、(1)はじめから払う意思がなかった場合は、詐欺罪(刑法246条1項)に該当する可能性があります。
「詐欺」というのは、簡単に述べると、相手を騙して勘違いを生じさせ、財産を移転させる行為をいいます。
無銭飲食(食い逃げ)の事例では、難しい言葉になりますが「挙動による欺罔(ぎもう)」として、騙すような言葉を何も発していなくても騙す行為にあたるとされます。
つまり、当初から食い逃げするつもりで入店し、何食わぬ顔で注文し、代金を払わないというのが典型例です。
他方、注文して食べた後にお金がないことに気づき、何も言わずに逃げてしまった場合は、いわゆる「利益窃盗」といって、刑法には処罰する規定がないので犯罪不成立ということになります。これはかなり驚かれるところかなと思います。
ただし、店員に対し「財布を取ってくる」と騙して店を出て逃げた場合は、店側に『債務免除の意思表示』があったとして、詐欺罪(刑法246条2項)にあたる可能性があります。
●本当に「うっかり」だったら?
──「同行者が払ったと勘違いしていた」など本当にうっかりした場合はどうでしょうか。
勘違いした場合は、無銭飲食のつもりではないので、故意がなく詐欺罪の成立は難しいように思います。
いずれにせよ、刑事責任の有無を問わず、民事上の支払義務は当然残ります。代金の支払いをしっかりとしてもらいたいですね。
(10月24日9時15分、本文を一部修正しました)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/
配信: 弁護士ドットコム