センスよく暮らしたい、おしゃれだと思われたい、そう考えている方はたくさんいると思います。でも、センスっていったい何で、どうやったら身に付くのでしょう? 『センスいい人がしている80のこと』(扶桑社)は、50種類の仕事、約50か国を旅してきた作家・有川真由美氏が「センスいいな」と思った魅力的な人のこと、感性を磨くためにやってきたことを満載した1冊です。 今回はその中から、センスがいい人がしていた「作法」についてご紹介します。マネしやすいことばかりなので、日々の生活に取り入れてみるのもいいかもしれません。
※本記事は有川真由美著の書籍『センスいい人がしている80のこと』から一部抜粋・編集しました。
「いただきます」と手を合わせる
「小学校にあがるまでに、料理の基本を身につける」を実践している保育園があります。保育園に行くと、子供たちが「いただきます」と手を合わせて、食べ方が美しいのに感動します。箸の使い方もきれいだし、園児が行う盛りつけもきれい。食器はすべてきれいな陶器で丁寧に扱い、大皿は両手で持ってそろりと丁寧に運ぶ……。視察に来たほかの保育園の先生が、子供たちの食事マナーに驚き、「プラスチックじゃないの? たくさん割れるでしょう?」と聞かれるそうですが、園児が割るのは年に1、2回。大人たちのほうが考え事をして、度々割ってしまうとか。
子供たちは稲を刈って新米を炊いたり、生きた鶏から捌いて料理したりする経験もしていて、そんな日は特別な「いただきます」「ごちそうさまでした」になるといいます。「いただきます」は、自分の命のために捧げてくれた、肉や魚、野菜など自然の命に対して「いただきます」と感謝する言葉。食材を育ててくれた人、料理をしてくれた人など、目の前の一膳に関わってくれた人への感謝も表しています。
「ごちそうさま」は、漢字で書くと「御馳走様」。冷蔵庫もスーパーもない昔は食材をそろえるのはたいへんなことで、遠くまで走り回って集める必要がありました。そんな苦労して食事を出してくれる人への敬意と感謝が込められているのです。
私もひとりの食事でも「いただきます」と手を合わせる習慣があります。すると、ランチョンマットを敷いて、お椀は右で茶碗は左、きれいに残さず食べるなど、なんとなく食卓の秩序が守られる。この”秩序”が自然に体にやさしい食材を選んだり、無駄に買わず、食材を使い切ったりと、美しい振る舞いにつながっていきます。
感謝がないと、買い物も料理も食べ方も雑になるのではないでしょうか。
人が手を合わしている姿は、子供でも大人でも高齢者でも、美しいものです。さまざまなものに敬意をもち、感謝することは、美しい作法の前提なのです。
有川真由美
作家、写真家。鹿児島県姶良市出身。台湾国立高雄第一科技大学応用日本語学科修士課程修了。化粧品会社事務、塾講師、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの職業経験を生かして、働く女性のアドバイザー的存在として書籍や雑誌などで執筆。約50カ国を旅し、旅エッセイも手がける。
配信: 毎日が発見ネット