「2歳。オスです。拾ってください」
東北地方在住の大学生ケンタさんは、スーパーの駐車場で段ボールに捨てられた小型犬を発見し、驚愕しました。段ボールにはかわいらしい犬が目を潤ませる様子に、道行く人たちも足を止めていたといいます。
ケンタさんは「捨てた人からすれば、親切な人に見つけてもらってね、という愛情も多少なりとあるのかもしれません。でも、人通りが多いとはいえ、スーパーの駐車場にペットを捨てることは、違法ではないのでしょうか」と、弁護士ドットコムニュース編集部に質問を寄せました。どのような法的な問題があるのでしょうか。田村ゆかり弁護士に聞きました。
●動物愛護法違反の可能性
「ペットを捨てる行為には法的な問題があります。動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)第44条第3項では『愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する』と定められています。
何が『愛護動物』に当たるかは同条第4項に定められており、ペットとして飼われることの多い犬や猫は愛護動物に当たります」
田村弁護士はそう指摘します。
犬や猫の遺棄は社会問題となっており、2020年には「親切な人に見つけてもらってね」と言いながら子犬を段ボールに入れて捨てる親子のCMが話題となりました。
これは、日本動物愛護協会を支援するためにACジャパンが流したもので、「優しそうに聞こえても、これは犯罪者のセリフです」という言葉とともに、動物を捨てたり虐待することは犯罪であると指摘していました。
●スーパーの駐車場に捨てても「遺棄」?
では、ケンタさんが目撃したような、スーパーの駐車場に犬を捨てる行為には、具体的にどのような問題が生じるのでしょうか。
田村弁護士は、「本件ではスーパーの駐車場に犬が捨てられていたということですが、これは『遺棄』に当たるのでしょうか。たとえば、川やごみ処理場に比べればすぐに人に発見されるだろう場所であることから、この点を検討します」として、次のように解説します。
「環境省から出された通知(平成26年12月12日環自総発第1412121号)によると、『遺棄とは、…愛護動物を移転又は置き去りにして場所的に隔離することにより、当該愛護動物の生命・身体を危険にさらす行為のことと考えられる』とし、『遺棄』に該当するか否かは(1)隔離された場所の状況、(2)動物の状態、(3)目的等の諸要素を総合的に勘案するとしています。
そして、(1)場所については、飼養されている愛護動物は、一般的には生存のために人間の保護を必要としていることから、移転又は置き去りにされて場所的に隔離された時点では健康な状況にある愛護動物であっても、隔離された場所の状況に関わらず、その後、飢え、疲労、交通事故等により生命・身体に対す危険に直面するおそれがある。
また仮に第三者による保護が期待される場所に隔離された場合であっても、必ずしも第三者に保護されるとは限らないことから、厳しい気象(寒暖、風雨等)にさらされるおそれや交通事故等に遭うおそれがある場所は生命・身体に対する危険に直面するおそれがあるとしています」
その上で、田村弁護士はこう指摘します。
「スーパーの駐車場という場所は屋外であり、寒暖、風雨にさらされるおそれ、交通事故に遭うおそれがあると言えます。また、必ずしも第三者に保護されるとは限らないため、やはり生命・身体に対する危険に直面するおそれがある場所と言えます。
そうしたことから、スーパーの駐車場に犬を捨てる行為は動物愛護管理法で禁止する愛護動物の遺棄に当たり、100万円以下の罰金に処せられる可能性がある、ということになります。
本件とは少し離れますが、前述の通知による『遺棄』の要件からすると、愛護動物を屋外に置き去りにすることは、そこがスーパーの駐車場であれ、動物病院の前であれ、学校の校庭であれ、ほぼ『遺棄』に該当することとなりそうです。動物を飼う際は最後までお世話をすることが法律上も要請されていると言えるのではないでしょうか」
配信: 弁護士ドットコム