若者と接しても「無理に合わせない」のが大事。北村一輝さんに聞く、世代間コミュニケーションのコツ

若者と接しても「無理に合わせない」のが大事。北村一輝さんに聞く、世代間コミュニケーションのコツ

北村一輝がほとんど喋らない!? 今までにない新しいドラマ「おっちゃんキッチン」



とある街にひっそりとお店を構える食堂の「おっちゃんキッチン」。

近所からの店主の評判は、味は一級品、顔だって男前。ただ、一つだけ困ったことが。それは、恐ろしいくらいに無口だったのです——。

北村一輝が店主の学(まなぶ)役を務めるTVerオリジナル番組「おっちゃんキッチン」では、寡黙な”おっちゃん”のもとへ夜な夜な若者たちが上の世代に対する日常の不満をこぼしにやってきます。


学はそれになにも答えず、ただ話を聞いているだけ。なのになぜか不思議と居心地が良い……。

あまり大っぴらに文句や不満を言いづらい今の時代だからこそ、「おっちゃんキッチン」で思い切り愚痴を言ってスッキリしている様子のお客さんたちを見ていると、近くに学のような存在がいたらいいな、なんて思ってしまいます。

今回はそんな「おっちゃんキッチン」で主演を務めた北村一輝さんに、ドラマの見どころを伺いました。無口すぎる学の役柄をどう演じたのか。日々の不満を募らせる若者たちにとって「おっちゃんキッチン」の存在とは? 北村さん自身が下の世代と接する際に心がけていることについても聞きました。

何気ない会話を描くストーリー。ホッとするような安心感を届けたい



——「おっちゃんキッチン」は北村さん演じる学のセリフがほとんどなく、今までにない珍しいドラマだなと感じましたが、実際に演じてみていかがでしたか?

北村さん(以下、北村):通常のドラマは構成がしっかり作り込まれ、完璧なストーリーを見せるものが多かった中で、「おっちゃんキッチン」は少しだけ見ている方に寄り添えるような存在でいられたらなと思っています。「ドラマ」という作り物ではありますが、そこまできっちりしてなくてもいいのではないかと考えながら作品に参加していますね。

僕自身もリアリティを突き詰めながらお芝居に臨んでいますが、「おっちゃんキッチン」に関してはあまり細かいことは気にしていません。

「おっちゃんキッチン」では何か大きな事件が起こったりはしませんが、友人や恋人同士の会話でも、何気ない会話が一番心地よかったりしますよね。「おっちゃんキッチン」もそんなイメージで、何気ない内容、愚痴をこぼす若者たちを見て、ホッとするような安心感を届けたいです。

——ドラマの中ではさまざまなお客さんがお店に訪れ、自身が抱える日常の愚痴をこぼしていきますが、彼女たちにとって「おっちゃんキッチン」はどんな存在なのでしょうか?

北村:近年は、気軽に愚痴を言いにくい時代になっていると思います。人の文句を言うと必ず言い返されたり、変わったことをすると否定され、好奇の目にさらされてしまう世の中じゃないですか。

ただ実際は、みんな失敗したり、間違えたりするものなのです。子どものころからたくさん間違えて、それを親や周りの人に正してもらいながら成長していきます。でもいざ大人になると、やっていることがみんなすべて正しいのかと。今の時代で常識とされていることが、何十年先から見たときに正しいなんて誰もわからないですよね。

少しでも間違ったことをしてしまうと叩かれてしまうような世の中だからこそ、心の中で抱いている不安や愚痴を発散できる場所として「おっちゃんキッチン」は機能していると思います。


北村:愚痴をこぼすお客さんに対し、学の役割はじっとそこにいて、話を聞いてあげること。

学はただ話を聞いているだけで、反論もしなければ、正解を出すこともしません。これってある種、カウンセリングに近いものだと思っていて。思っていることをありのまま話して、ひたすら聞いてもらう場所は、このドラマの中だけに限らず、誰にとっても必要なのではないかと考えています。

ぜひ「おっちゃんキッチン」を見ながら、人の愚痴を聞いて「そうだよね、わかる」なんて、ご自身の普段言えない愚痴と重ねていただければいいなと思います。

関連記事: