初主演を果たしたアメリカ映画(『東京カウボーイ』)や、大ヒット映画『ラストマイル』、現在放送中のドラマ『無能の鷹』など、今年も大活躍の井浦新さん(50歳)。
ディレクターを務めるファッションブランドや、自然由来のサステナブルコスメを手掛けるなど、俳優以外の活動も多岐にわたっています。
そんな井浦さんに公開中の主演映画『徒花 -ADABANA-』(以下『徒花』)のこと、さらに八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を前に「やりたいことは口に出すタイプ?」「忙しくて大変では?」とぶつけてみました。
ひとり二役に「楽しみ」しかなかった
――『徒花』は、上流階級の人間にだけ、延命治療を目的に、自分と全く同じ見た目の「それ」の保有が認められた未来が舞台です。病で死を前にした主人公・新次は、自分の身代わりとなる「それ」と対面します。向き合う際、どんな感覚だったのでしょう。
井浦新さん(以下、井浦):“楽しい”という感覚しかなかったです。
――役者としての楽しみですか?
井浦:そうです。この物語の世界では、医療のためにクローンの存在が良しとされています。相当な刺激を受けました。僕はひとり二役を演じるわけで、当然、いろんな負荷がかかってきますが、それだけやりがいがあります。自分で作ってきたもの同士をぶつけ合うというのは、やりたくてもなかなかできないことですから、本当に楽しみしかなかったです。
主人公と見た目がそっくりな「それ」に自分も対面した
――「それ」の姿勢や動き、声の感じなどは一切、脚本には書かれていないのですか?
井浦:書かれていません。そういったことは俳優が生むことだと思います。「それ」は新次と、細胞的に同じで外見もうり二つ。でも肌の色や声の質感、姿勢などは、育ってきた環境によって変わってきます。
――後半の「かたつむりやトンボの話」が出てくる対話シーンは、特に身震いしました。
井浦:あのシーンは、クローンの撮影が始まって2日目に撮りました。対話のシーンまでに、自分のなかで、ちょっとずつ新次を積み重ねて育てていました。その新次と、「それ」が対面したんです。あの研究所で管理してくれた人たちのもとで育った「それ」をどう表すか。アプローチしていった結果、ポン!と出てきたのが、あの「それ」でした。
――ポンと出てきた。
井浦:はい。育てていった新次とは違い、僕も対面する感覚でした。
配信: 女子SPA!