「ニラレバorレバニラ」中国ではどっちで呼ぶ? 実は“似て非なる”「中華料理」と「中国料理」の世界

「ニラレバ炒め」「レバニラ炒め」普段どちらで呼んでいますか? 中国の文化に詳しい専門家が、人気の料理から食文化をひもときます。

「ニラレバ」「レバニラ」…どっちで呼んでる?

【実際の写真】「えっ…ちょっとグロいかも…」 これが海外の市場に並ぶ生々しい「レバー」です(やや閲覧注意)

 レバーとニラを炒め合わせた料理のことを、あなたは「ニラレバ炒め」「レバニラ炒め」のどちらで呼んでいますか? 中には「どっちの料理名が正しいんだろう」「中国ではどう呼ばれているの?」と疑問に感じたことがある人もいるかもしれません。

 ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家の青樹明子さんは、「中華料理と中国料理は“似て非なるもの”」とした上で、中国においても人気のある料理だと話します。中国では「ニラレバ」「レバニラ」のどちらで呼ばれているのか、中国の人たちにとってどんな存在なのか……人気メニューから、中国の奥深い食の世界をのぞいてみましょう。

ラーメンやギョーザは「日本料理」?

“日本人の食卓”の豊富さは、世界中の人々が驚嘆します。和食・洋食・中華が日常の食生活に溶け込んでいて、洋食や中華料理の中には、元々は外国料理だったことを忘れてしまっているメニューもあるほどです。

 日本人は外来文化を自分流に取り込むことが得意といわれていますが、食方面は特に顕著です。自分たちに寄り添った味に変化させて、日常に取り込んでいる洋食や中華も少なくありません。カレーライスは本場インドとは違う“既に日本食”ですし、ナポリタンに出会ったイタリアからの観光客は、「イタリアでは食べたことのない味!」と感嘆しています。

 中でも、中華はその最たるもので、ラーメンやギョーザは中国人にとっては「日本料理」の位置づけです。80年代から90年代にかけて、「本場のラーメンが食べられる」と期待しながら中国に行った日本人は、まったく似ても似つかない麺類が出現したことに驚き、かつ落胆しました。

 中華料理と中国料理は“似て非なるもの”の典型です。中華料理というのは、日本化した中国料理、つまり日本人の味覚に寄り添った中国料理で、「町中華」といわれる、街の小さなお店を中心に発展しました。町中華は、日本人経営の比較的小さな店舗で、気軽に味わえる庶民の味として人気を集めてきました。日本人の好む中華は、町中華を基盤としてつくられてきたともいえます。

 一方で中国料理は、華僑の方を中心に大資本のもとで営む、正統派の中国料理です。中国の国家資格を持つ中国人の料理人が本場の味を提供し、コース料理が主流です。単品ではないので、値段も町中華よりは高いというのが一般的です。

「ニラレバ」「レバニラ」どっち?

 日本の庶民に支えられ、愛されてきた日本風中華「町中華」ですが、ラーメン、ギョーザに並んで人気のメニューが「ニラレバ炒め」です。

「ニラレバ」が正しいのか「レバニラ」が正しいのか、諸説あるようですが、漫画家・赤塚不二夫さん原作の漫画「天才バカボン」の影響による説が根強くあります。

 バカボンのパパは、「太陽は西から上って東に沈む」など逆を好む思考の持ち主で、当時日本で流行し始めていた「ニラレバ炒め」も「ニラレバじゃない、レバニラだ!」と主張する…というくだりがあるようです。後にアニメ化されたときも「ごちそうはレバニライタメなのだ」という回があるほか、バカボンのパパのセリフとして、「レバニライタメ知らないとはおまえそれでも日本人なのか?」などというのが登場して、若者を中心に広まっていったといわれています。

 ということは、日本に持ち込まれた際は「ニラレバ炒め」だったということになりますが、中国のオリジナルはどうなのでしょうか。

 結論から言いますと、中国でも「ニラレバ炒め」と「レバニラ炒め」、どちらも正しく、同じように普及しています。あえて言えば、「ニラレバ炒め」の方がやや一般的か、と思われる程度です。「レバニラ炒め」の名称は、日本から逆輸入されたと考えてもいいかもしれません。

 しかも、日本の町中華と、本場中国とはかなり違いがある中で、その差が比較的少ないという珍しい例だといっても過言ではありません。

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