フィリピン人のマリアさん(仮名・56歳)と日本人の修三さん(仮名・69歳)の二人は、結婚して13年以上になる。だが、いまだにマリアさんは在留資格が出ず、仮放免の状態が続いている。
修三さんは凄惨な事故が原因で身体に障害が残り、車いす生活を余儀なくされているが、二人は互いを支え合いながら、日々、ささやかな生活を送っている。(ライター・織田朝日)
●共通の友人の紹介で二人は出会った
マリアさんは、まだフィリピンで暮らしていたころ、別の日本人男性と出会って結婚することになった。
男性から「婚姻は入国してからでいい」と言われたこともあり、手続きのことは何もわからないまま、すべて任せていたという。
2004年に来日したが、数年後、男性の無責任な人柄が原因で、離婚することになった。その結果、マリアさんは在留資格を失ってしまった。
その後、マリアさんは、共通の友人の紹介で群馬県在住の修三さんと出会い、互いに惹かれ合い、すぐ交際に発展した。
修三さんにはすでに三人の子どもがいたが、マリアさんと打ち解けて仲もいい。その後にできた孫たちも実の祖母のように彼女を慕っている。
二人は結婚してからもケンカすることはなく、仲睦まじく過ごしていた。しかし、入管はマリアさんに再びビザを出すことはなかった。
それどころか、マリアさんは収容施設に3回も入れられて、そのたびに二人は否が応でも離れ離れとなった。
●入管職員は「一緒にフィリピンで暮らせばいい」と言い放った
当時健康だった修三さんは、マリアさんが収容されるたび、朝3時から長男と共に車に乗り込み、東京入管(品川)まで面会に通った。
入管の職員には何度も「妻を返してください」「妻を返してくれなければ自分も家に帰らない。妻とともにここ(入管)に泊まる」と訴えた。
しかし、そんな必死な修三さんに対して、職員は「旦那さんも一緒にフィリピンで暮らせばいいじゃないですか」と言い放った。
また、若い女性職員から「セックスはしているんですか?」「一緒にお風呂に入っていますか?」「奥さんを愛しているんですか?」と、信じられないほど無神経な質問を浴びせられることもあった。
これに対して、修三さんは「当たり前です。愛しているから妻を返してもらいに来ているんです」と臆することなく言い返したが、息子の前で言われることがとても恥ずかしかったという。
配信: 弁護士ドットコム