「人質司法を変えるきっかけに」 日弁連が導入訴える「弁護人立会い」 取り調べで何が変わる?

「人質司法を変えるきっかけに」 日弁連が導入訴える「弁護人立会い」 取り調べで何が変わる?

●録音・録画があっても問題のある取り調べは発生 

ーー冤罪を防ぐためには取り調べの録音・録画だけでは足りないのでしょうか?

捜査の違法性を巡って国賠訴訟が起こされた「プレサンス事件」や、元弁護士の男性に対して黙秘権を侵害する違法な取調べがなされたとして国家賠償請求が認められた事件など、違法な取調べが問題となる事案が相次いでいます。

違法な取調べを改善するだけなら取調べの録音や録画で対応できるという意見もあるようですが、プレサンス事件など最近の状況をみると録音・録画だけでは違法な取り調べを抑止できないことが分かります。

そもそも、録音・録画が義務づけられているのは一部の事件に限られています。録音・録画のない事件の取調べでは一層酷いものもあると思われます。日弁連の「日本の刑事司法見える化プロジェクト」のホームページ(https://www.nichibenren.or.jp/keiji_shiho_mieruka/index.html)で「取調べの問題事例から見える日本の刑事司法」として違法取調べの事例が掲載されていますが、いずれも酷いものです。これが一部の極端な事例とは考えられません。

実際には適正な取調べをする捜査官もいますが、昔ながらのやり方で取調べをする人もいます。また、捜査官の評価は自白を取れるかどうかで判断されている可能性があり、それも違法取調べがなくならない原因ではないかと考えます。

普段から問題のある取り調べをしているから、録音・録画されている状況でも特に意識せずに違法不当な取り調べをするのだろうと思います。

そのため、日弁連の総会決議では、全過程での可視化と弁護人立ち会いをセットにして求めています。

●海外では弁護人が取り調べに立ち会える国も

ーー海外ではどうなっていますか?

いわゆる「先進国」と言われる国ではほぼ弁護人の立会いが認められています。東アジアでも台湾が1982年、韓国は2007年に弁護人の立会いを導入しました。

特に韓国・台湾の刑事訴訟法はその歴史的経緯から日本との類似性があるのですが、取調べの立会いについては一歩も二歩も先に行っていることになります。

ーー諸外国では「取調べ立会い」でどのような弁護活動をしているのでしょうか。

立会いが録音・録画と違うところはリアルタイムで状況を把握できるということです。どの国でも、弁護人が取り調べ内容をふまえて被疑者に対し助言を行うことは変わりません。それ以上にどの程度の権限を弁護人に与えるかは国によって違います。

まず一つ目として、「人間カメラ型」と呼ばれる形があります。弁護人が取り調べの場に同席はするものの、発言や取り調べへの介入はできないというものです。

ただ、「人間カメラ型」であっても、取調中に弁護人から適宜休憩や被疑者との打合せを求めることは可能です。ですので、弁護人が必要と考えた場合には被疑者への助言や打ち合わせができます。

次に二つ目の形として、取り調べをする側に不適切な発問などの問題があった場合、弁護人が「その質問はおかしくないですか?」や「その質問は先ほど本人が答えないと言いましたよね?」などとクレームを入れることができる制度を採用する国もあります。

先日視察に行ったイギリスはこちらです。また、韓国も不当な取調べに対しては弁護人が異議を述べることができます。

三つ目は、取り調べ自体に弁護人が意見を述べることができるものです。例えば、被疑者の供述調書に対して弁護人が「被疑者はそう言ったが、その趣旨はこう理解すべきです」などと発言できます。

韓国は取調中に意見を述べることはできないのですが、取調べ終了後に弁護人が意見を述べることができるので、この形になります。

ただし、いずれの場合であっても弁護人が被疑者に代わって質問に回答することはできません。

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