●逮捕後に生じた変化「ごめんなさいしか言えないです」
「正直、大網白里の事件から、強盗で得た金でヤミ金の借金を返して、競艇をやって、パクられるからガラを隠して……と、胴元になろうと、指示役になろうとやっているのでずっと犯罪のことしか考えてなかったです」と、逮捕に至るまでの心境を振り返るが、逮捕後はこうした気持ちに大きな変化が生じたという。
各事件の取り調べにおいて、捜査員らと関わり、また拘置所内で被害者の心情や加害者家族の実態が記された書籍を読み、篤志面接を受けるなどして、少しずつ考えが変わってきたと語る。
「捜査の過程で出会った人にかけられた言葉や、篤志面接などで、被害者が失ったものの大きさがわかりました。また自分が家族や友人の優しさを感じたように、いうまでもなくそれは被害者の周りにもあって、彼らの家族にもあった。それを僕が突然奪ってしまった……」
証言台に肘をついて泣き始めた被告人は「本当は泣くつもりじゃなかった」と言いながら、裁判の証拠になっていない関係者らの調書も読んだことを明かし、さらに続けた。
「広島の被害者の方でいえば、犯行前の状況がよく書かれている調書を読みました。お酒を飲みに行くのが好きで、釣りやテニスが好きだった……もう今はそういうことができなくなってると……。こんな未来を奪った犯人を許せないと……。
他の事件の調書でも、犯人に今までの日常を理不尽に奪われた苦しみ、悲しみが続く。悔しくて悔しくてたまらないと言っていました……言いたいことはいっぱいありますが言葉にならない。ごめんなさいしか言えないです」
●「無期懲役ではなく死刑が相応しいと強く望みます」
涙を流しながらこのように語った被告人は逮捕後、今に至るまで、全容解明のために捜査に協力し、また共犯らの公判にも証人出廷し、事件について語り続けている。
こうした姿勢は検察官も論告で「真相解明に寄与している」と認めていた。現在「ルフィ」ら指示役のうち「キム」以外は黙秘しているといい、永田被告人は彼らの公判でも証人として証言するつもりであると明言している。
論告で無期懲役が求刑されたのち、最終陳述では泣きながら、自ら、死刑を求めた。
「私のやった役割は重大で、私のせいで凶悪な強盗になり、私のせいでエスカレートさせていった。私が加わることで悪い方向になっていたと思います。無期懲役が求刑されましたが、犯行はとても悪質で残虐で結果も……とても重大なもの……責任を果たすには無期懲役ではなく死刑が相応しいと強く望みます」
判決は11月7日に言い渡される。
配信: 弁護士ドットコム