「パクられても5年で済むと…」ルフィ事件で残忍な犯行を重ねた実行役…犯行はなぜエスカレートしていったのか

「パクられても5年で済むと…」ルフィ事件で残忍な犯行を重ねた実行役…犯行はなぜエスカレートしていったのか

●指示役への憧れ、事件は「自分の意思でやってます」

公判ではたしかに被告人自身から、事件についてのありのままが正直に語られた。そこからは被告人が抵抗感なく「闇バイト」募集から強盗に手を染め、また途中からは指示役のような生き方を目指そうとしていたことがわかった。

被告人は事件取材、石川県内で土木関係の仕事をしていたが、競艇にのめりこみ、消費者金融だけでなくヤミ金からも借金を重ねた。この返済と、競艇のための元手を得るため、2022年11月上旬にTwitter(現X)にて「闇バイト」募集に応募。フィリピンのビクータン収容所にいた「ルフィ」ら指示役とつながる。

最初の“案件”は空き巣だったが「中学一年の頃から犯罪歴が多い。常習的にやっていたこともあり、一般人と違い、抵抗はあまりなかったです」と振り返る。

被告人が密に連絡を取る指示役は「キム」。被告人は一件目の“案件”を綿密に打ち合わせる中で「キム」に対して尊敬の念を抱いた。

「犯罪において私は一般の人と違う考えを持っています。いかつい人が怖いと思うかもしれませんが、私は、底知れないとか、自分よりも犯歴がある人を怖いと思う。キムさんはとても頭がいい。私も犯罪歴がありましたので、かなり知識はあるほうでしたが、キムさんはそれを遥かに上回り、口調や説得力が上回っていたので、格上だと思いました」

しかし格上だとは思っていたが「キム」への恐怖から犯行に手を染めたわけではないとも付け加えた。

「怖いからやったわけではありません。怖くて逆らえなかったということもありません。自分の意思でやってます」

●「殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげません」

犯罪という世界において一目置く「キム」と“案件”を繰り返すなか、被告人は次第に、他の実行犯からも“ヘッド”などと呼ばれるようになる。2件目に起こした東京都中野区の強盗では、家に押し入る直前に「キム」は永田被告人と繋いでいたテレグラム通話をスピーカーモードにするよう求め、他の実行犯らに向け、車内でこう呼びかけた。

〈殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげません。家には3000万円あります。現場ではカルパスくんの指示に従って、女子供は口を塞いで黙らせてください。チャチャッとやっちゃって大丈夫です〉

“カルパス”とは被告人のテレグラムアカウント名である。「キム」は多くの案件でこのように突入前、実行犯らにスピーカーフォンで発破をかけるのだが、このときはそれだけでなく実行犯に向けて“永田被告人がリーダーである”と示したことから、「ルフィ」の案件において被告人は一目置かれた存在となったようだ。

以降、実行犯リーダーとして、現場では指示を出すこともあった。加えて、紹介される“案件”について、永田被告人から「キム」に対し、提案を申し出るようにもなった。

実際、この中野の事件において、家人の制圧に時間がかかったことから“次の案件ではモンキーレンチを用意して欲しい”と「キム」に伝えている。こうしてモンキーレンチを携えて広島市内の強盗に及び、家に住んでいた49歳男性の頭を殴り、大怪我を負わせた。

このときも突入前に「キム」はスピーカーフォンで実行犯らにこう告げていた。

〈殴ったり蹴ったりしないと報酬はあげません。カルパスくんがモンキーレンチでじゃんじゃんやってくれますので、皆もどんどんやってください。ただし、殺しちゃいけませんよ〉

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