●同性カップルらの共同生活を「認定」
寺原弁護士が挙げる3点目のポイントは、性的指向による区別だ。
「判決では、性的指向による区別の存在について判断しています。かつて異性愛が自然で、同性愛は病理であるという認識がありました。ですので憲法の制定時は結婚は男女間のものであると規定されています。
しかし、この性的指向は本人の意志で選択、変更はできなことが現在は明らかになっており、その性的指向による差別は許されないということや、すべての人の人権が性的指向にかかわらず尊重されるべきであるという認識は広く共有されていると指摘しました。
そして、原告控訴人の具体的な生活状況にかなり手厚く触れ、同性カップルもお互いを人生の伴侶としたり、家事や生活費を分担しあり、子どもを養育したりと、婚姻関係にある夫婦と異なることのない共同生活を営んできた実態があると認定しました。
以上のことなどから、この配偶者としての法的身分関係の形成ができることが、個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益であり、男女間と同様に同性間でも尊重されるべきだと言っています。そして、同性間では配偶者としての法的身分関係の形成ができないことの不利益の重大さを認定しています」
●男女間と同性間の「区別」に合理的根拠は?
4つ目のポイントは、こうした男女間と同性間のカップルにある「区別」の合理的根拠の検討だ。
「先ほども述べた通り、自然生殖可能性は婚姻の不可欠な目的ではなく、法的な利益は同性カップルにとっても重要なことだとしました。しかも、同性カップルに婚姻という法的保護を与えたとしても、そのことが男女間に与えられている法的保護になんら影響を与えないとしました。
それに加えて、異性カップルも連れ子や養子など自然生殖による子どもだけを育てているわけではなく、さまざまなパターンがあり、同性カップルも実際にそうして子育てしているケースがあるとしました」
さらに、判決では国連理事会や自由権規約委員会が同性婚について法改正を求める勧告を出していることや、自治体で広がっている同性パートナーシップ制度についても触れている。
「判決では、同性間の関係に社会的公認を受けたいという要請と、それを受け止めるべきであるという認識が広がっていることを示しています。世論調査でも同性婚に賛成する割合が増えており、社会的需要は相当程度高まっているという認識を示しました。
こうした理由から、男女間と同性間のカップルに生じている区別は、現在も維持することに合理的根拠があるとは言えないと断じています」
配信: 弁護士ドットコム