「憲法14条1項と24条2項に違反する」
東京高裁で10月30日、谷口園恵裁判長が判決の骨子を読み上げる中、原告らが望んでいた言葉が法廷に響いた。
同性カップルの法律婚を認めない民法などの規定は憲法に反するとして、国を相手取り訴えている集団訴訟。その控訴審判決の言い渡しだった。
この集団訴訟は2019年2月、全国4つの地裁で提訴された。その一つが、今回判決のあった東京の1次訴訟だ。提訴から5年が経ち、12人だった原告はさまざまな理由から今は7人になった。その中には、パートナーとの結婚を望みながら、一審の東京地裁判決を聞くことなく、亡くなった原告もいた。
判決後に開かれた会見で、原告のひとり、小野春さん(仮名・50代)は声をつまらせながら語った。
「うれしい判決でしたが、早く結婚できるようになってほしいと言いながら、もう何人も友達が亡くなりました。1日も早く、同性婚をできるような法律になってほしいです」
訴訟は現在、5つの地域でおこなわれ、この日の東京高裁判決を含め、これまでに7つの「違憲」判決が出ている。今、原告の思いとは——。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)
⚫︎「思いはちゃんと届いていた」
東京高裁の法廷で、判決の言い渡しはおよそ20分に及んだ。原告たちは谷口裁判長の言葉を一字一句もらさぬよう、耳を傾けているように見えた。
東京高裁の判決がこれまでの判決と異なった一つが、原告らがどのように暮らしているかを認定した点にある。
たとえば、小野さんとパートナーで原告の西川麻美さん(仮名・50代)の2人は、それぞれの子どもたち3人と暮らしている。判決文では西川さんが小野さんの子どもの入院手続きをする必要があった時、病院側に同性パートナーであることを説明しても、難色を示されたことがあったと書かれていた。
また、小野さんが病気療養で収入が減った時、西川さんは小野さんを被扶養者とすることができなかった。こうした小野さんたちが生活で困ったことがきちんと判決文に明記された。
小野さんは会見で判決文を読んだ時の気持ちをこう話した。
「裁判中は自分の言いたいことはちゃんと伝えられたのだろうか、皆の色々な思いも含めて伝えなければならないのに、うまくできただろうかと自信を失うことがいっぱいありました。でも、(判決文を読んで)ちゃんと届いてたんだなと」
⚫︎「配偶者になれるという希望が持てた」
判決文の中には、夫や妻ではなく「配偶者」という言葉が多く書かれていた。異性カップルも同性カップルも等しく使える言葉だ。
原告であり、女性カップルである大江千束さん(60代)と小川葉子さん(60代)は、もう30年にわたり同居し、家事や生活費を分担しながらともに暮らしてきた。しかし、判決文には、小川さんが体調不良になった際、同性パートナーが保証人になれるか問い合わせることを敬遠し、入院しなかったことなどが書かれていた。
小川さんは判決をこう噛み締めた。
「大江はずっと私の配偶者ではないと考えていました。家族というような置き換えをしていました。でも、これからは配偶者という考え方もできるのかなと希望が持てた。
私たちにはもう時間がありません。高齢者の部類ですから。病気もありますので、そういう時にやはり思うのは、法的な支えがあったら安心だなということです」
この日、12月13日に福岡高裁の判決を控える九州訴訟の原告らも東京高裁に駆けつけた。
原告のひとり、こうぞうさんは「満足のいく判決だったことを喜ばしく感じています。福岡地裁の判決では現在の婚姻制度とは別の制度について触れられていますが、僕たちは別制度を求めていません。法律婚をして夫婦になりたいと訴えてきました。引き続き、福岡高裁判決では、東京高裁判決のさらに一歩先を行くような判決を期待しています」と話した。
【同性婚訴訟】5地方で計6件の訴訟が起こされている。今日の控訴審判決を入れて8件の判決が出ており、その内7件が「違憲」「違憲状態」との判断を示した。これまでに同性カップルの結婚を認めない現在の規定を「合憲」と判断したのは大阪地方裁判所の判決のみ。
配信: 弁護士ドットコム