「仁義なき戦い」シリーズ(1973年~74年)などの名脚本家・笠原和夫の“幻の脚本”を「孤狼の血」(2018年)の白石和彌監督が映画化。半世紀の時を超えて蘇らせたのも奇跡の因縁というべきか。
戊辰戦争の最中に起きた新発田藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた歴史的策謀を背景に、藩に捨て石にされた11人の罪人たちの死闘を大迫力で描く。まさに「集団抗争時代劇」である。笠原脚本はプロットのみしか残っておらず、半ばオリジナルだが、そこには「笠原タッチ」が見事に継承され、「一寸の虫にも五分の魂」と叫びたいほどだ。
幕末期、日本を二分した内乱・戊辰戦争が勃発し、新政府派の官軍は旧幕府軍を追いつめていた。新潟の新発田藩家・家老・溝口内匠(阿部サダヲ)は密に官軍に寝返ろうとしていた。
溝口内匠は、両軍が城内で激突することを避けるため、オトリの“砦防衛戦”を命じる。勝てば無罪放免、との甘言に乗せられた侍殺しの政(山田孝之)ら重罪人が駆り出され、鷲尾兵士郎(仲野太賀)も加わった。ついに彼らの凄絶な生き残るための闘いが始まった─。
砦につながる吊り橋での攻防や砦内の乱戦が、華麗なチャンバラではなく、斬り合い、殺し合いのダイナミズムで迫る。W主演の山田孝之、仲野太賀らが血みどろ、汗まみれ、泥だらけ、七転八倒、必死の形相で挑む。このサバイバル戦に私は久々に血湧き肉躍った。「官軍も賊軍もあるか。皆、ブッ飛ばしてやる!」という彼らのセリフがすべてを物語る。
2時間半余の長尺も一気呵成、怒濤の展開。これは「時代劇版・仁義なき戦い」というべきか? 往年の東映映画に愛着多々の中高年なら問答無用、必見の一撃!
(11月1日全国公開、配給・東映)
秋本鉄次(あきもと・てつじ)1952年生まれ、山口県出身。映画評論家。「キネマ旬報」などで映画コラムを連載中。近著に「パツキン一筋50年」(キネマ旬報社)
配信: アサジョ
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