自然解凍でも食べられる「冷凍おにぎり」発売、冷凍研究に強みを持つデイブレイクと玉子屋が共同開発

自然解凍でも食べられる「冷凍おにぎり」発売、冷凍研究に強みを持つデイブレイクと玉子屋が共同開発

国内でも珍しい自然解凍に対応した冷凍おにぎり。凍結機の製品企画などを手掛けるデイブレイク(東京都品川区)と、企業向け弁当の販売などを営む玉子屋(東京都大田区)が共同開発した。使用する米の水分量などを調整し、従来ならば自然解凍を行うと損なわれてしまう食感や味を、通常のおにぎりとそん色ない状態に保てている。自然解凍に対応することで、弁当にそのまま入れられるだけでなく、フードロス削減にも期待が寄せられている。

炊いた白米は、冷凍すると水分を失い、ロウのようにポロポロと崩れる白蝋化(はくろうか)という現象が起きてしまう。そのため、通常ならば炒飯のように油でコーティングを施すなどして、水分の蒸発を防いでいる。また、冷凍の米を自然解凍すると、冷凍時に破壊された細胞から水分が失われてさらに白蝋化が進んでしまうなどの問題が起こる。

今回の冷凍おにぎりでは、米の選定や水分量の調整など、商品のレシピや調理工程、冷凍方法などを調整し、凍らせた際にそうした現象が起こらないようにし、冷凍しても炊き立てのような食感を維持できるようにしている。自然解凍の場合、解凍にかかる時間は約3時間半。出勤前に冷凍庫から取り出せば、昼食時には食べられるイメージだ。

冷凍することで長寿命化を実現しており、必要な分だけ解凍して提供できるため、食品ロスの削減にもつなげられる。

〈米の違いによる水分量などを調整工場の新たな売上に〉

そもそもどういった経緯から自然解凍できる冷凍おにぎりを開発することになったのか。

デイブレイクの片山良宏副社長は「冷凍のおにぎりが欲しいという話を聞き持って行ったところ、自然解凍が欲しいという話になった」と振り返る。

玉子屋は昼食需要を捉えたビジネスを展開している。一方で、午後の軽食や夜食などとしての軽食ニーズがあることは把握していたものの、オペレーションの関係で昼食以外の時間に対応した商品の展開が難しかったという。自然解凍の商品ならば、オフィスに運び、夕方などに軽食として喫食できるようになるため、新しい売上につなげられるという期待もあったようだ。

元々デイブレイクは、スチーマーやレンジで解凍する冷凍おにぎりを開発し、オフィスビルなどで販売を行ってきたが、自然解凍に対応した冷凍おにぎりは作っていなかった。そこで、過去の研究を活かしながら自然解凍に対応した冷凍おにぎりの研究を進めた。

開発を手掛けた新規事業開発室の五十嵐圭佑マネージャーは「米の種類だけでなく、新米か古米によっても水分量が違っていたため、そこの水分量の調整には苦労した」と語る。

今回発売したのはシャケのおにぎり。10月15日からの18日間限定で玉子屋の都内10店舗限定で実験的に販売している。

また、これまで商品を製造していなかった時間に製造して冷凍することで、新たな売上につなげられるだけでなく、工場の稼働率を高めることもできるという。

将来的には冷凍おにぎりには他の活用方法が期待できるという。冷凍のおにぎりを自然解凍できれば、子供のお弁当として冷凍おにぎりを朝に入れて、それを溶けた状態で昼には食べられる。さらに、保冷剤の代わりにも活用できる可能性もある。

今後について、片山副社長は「ホテルやなどで簡易的な食事のニーズは今後あると感じている。自然解凍のおにぎりなど、といった商品は支持を広げていくと思っており、地域活性化などの文脈でも取り組みを進めていければ」と話した。

なおデイブレイクでは、自社ブランドによる商品開発を強めている。今回が第1弾で、今後は、自然解凍に対応した別の商品の開発も進めている。

〈冷食日報2024年10月30日付〉

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