【リレーエッセイ「ラブレター from 酒場」】高級飲食店/スズキナオ

 つい先日、WEB連載の企画で高級ホテルの「アフタヌーンティー」というものを体験してきたんです。

 アフタヌーンティーというのは、19世紀のイギリス貴族たちの間で広まった習慣で、ランチとディナーの間に、紅茶を飲みつつお菓子などを食べて優雅に過ごす行為のことを指すそうです。その習慣が形を変えつつ欧米に広がり、さらに洗練されていった歴史があって、ここ20年ほどは日本でも、主にホテルのレストランのプランの1つとして提供されるようになってきたとか。

 高級ホテルに泊まったりディナーを食べたりするのは高価すぎて無理でも、アフタヌーンティーなら割と手頃にセレブな気分を味わえるというので人気らしく、よく利用する人の間では「アフヌン」と略されたり、あちこちのアフタヌーンティーを楽しむ活動のことを「ヌン活」と言ったりするそうです。

 私にはまったく縁のない世界で、縁がなさすぎる故にやってみようということになったのですが、そもそも、“割と手頃に”とさっき書きましたが、詳しい人にお勧めしてもらったホテルのアフタヌーンティーを予約しようと思ったら8800円もするんですよ! それでもネット予約割引が適用された額で、定価は1万円以上でした。

 当日、1人で緊張してホテルに行って、マナーやルールも全然わからないままオロオロと体験してきたんですが、結果から言うと、甘い物ばっかりなのかと思っていたらそんなこともなく、しょっぱいつまみも何品かあって、しょっぱいの甘いのと交互に食べていったらいいバランスでした。そしてどれもおいしい!

 また、一緒に飲んだ紅茶が本当に香り高くて驚きました。いろんな種類の紅茶が飲み放題で、どれも個性的な風味で…。

 と、それはそうと、ここまで読んでくださった方は思っているはず。「そこ、お酒は飲めないのか?」と。私もそう思いました! しょっぱい料理もあるので、どうしても「ここにワインでも合わせてみたい」と考えてしまう。けど、単品メニューを見たら、生ビールが2700円するんですよ! 700円でも高い気がするのに2700円!これはさすがに手が出ませんよね。「いいわ、紅茶で我慢するわ」と思ったのですが、メニューをよく読んだら、インスタグラムにハッシュタグをつけてアフタヌーンティーを楽しんでいる模様を投稿したら、スパークリングワインが1杯無料だと書いてあるんです。

 普段は渋い酒場の写真などばかり投稿している自分のインスタグラムに、急にアフタヌーンティー。これはちょっと恥ずかしいなと思いました。が、その時、私は「パリッコさんなら絶対にここでインスタに投稿してでも酒を飲むはず!」と考えました。想像上のパリッコさんに背中を押されるようにして、ちょっと照れながらスマホの画面をスタッフの方に見せて、それで飲んだスパークリングワイン、めちゃくちゃおいしかったです!

 実際、最近ではアルコール飲み放題もセットになったアフタヌーンティーも流行り始めているそうで、いつか我々が2人で「ヌン活」する日が来るかもしれません。

 ちなみに私が行ったホテルのラウンジは高層ビルの40階にあって、とんでもなく眺めがいいんです。ああいう場所で日常的に食事をしている人もいるんだろうなと思うと、自分の生活の庶民ぶりが悲しくなってきます。が、こっちにはこっちの楽しみがありますよね!おととい行った、大阪・堺の「田宮酒店」という角打ちは、海沿いの街・堺だけあって、新鮮な魚介類がすごく安いんです!アワビの刺身が600円でしたよ! このおいしさはきっと地上40階で食べる料理にも負けないはず、と思いました。次回のテーマ「刺身と酒」でどうでしょうか!

スズキナオ:東京生まれ、大阪在住のフリーライター。著書に「遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ」「『それから』の大阪」他。「家から5分の旅館に泊まる」が絶賛発売中。

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アサジョ
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