●証拠改ざん事件は「個人の問題に矮小化された」
「袴田さんの冤罪事件で、結論としては控訴を断念するとする一方で『本判決は、到底承服できないものであり、控訴して上級審の判断を仰ぐべき』などと談話を出したこと自体、検事総長としてありえない問題発言でした。それだけでも職を辞すべき重大な問題です。
それに、検察にとっては衝撃的な大阪高裁の付審判決定がすでに出ていて、検察として取調べの問題に直面していたところに今回の大阪地検の検事正による性犯罪事件が起きた。しかも、これは単発の問題ではなく、組織的に隠蔽されていた疑いがあるので、検察組織として非常に重大な責任が生じています」
郷原弁護士は異常事態にそう危機感を募らせる。
”検察の危機”が叫ばれたことはこれまでにもあった。
大阪地検特捜部の検事が証拠のフロッピーディスクのデータを改ざんしたとして、証拠隠滅罪で実刑判決が確定。特捜部長らにも有罪判決が下された。この事件の後に「検察の在り方検討会議」が発足し、2011年3月に改革の道筋を提言した。
自身も委員として議論に参加した検察の在り方検討会議の提言について、郷原さんは「本当はあの時、もっと検察組織全体の問題として色々な対策をとって信頼回復を図るべきでしたが、結局、大阪地検特捜部の主任検事やその上司の特捜部長、副部長の問題として矮小化されてしまいました」と振り返る。
●「検察内部や法務省は把握していた可能性がある」
「ところが、今回はもう全く個人レベルの問題ではなく、大阪地検トップの人間が犯した犯罪です。一体、検察の中でどこまでの人間がそれを認識していたのか。北川氏は事件について何も明らかにしないまま早期退職したことになっていますが、検事正が理由なく辞めるというのは普通には考えられないことです。
被害者が被害を申告しないからそのままにしていただけで、検察内部ではある程度認識されていたのではないでしょうか。法務省も何か事情があることを把握していた可能性があります」
検察による不祥事の隠蔽疑惑に言及した郷原弁護士は、第三者による調査を実施すべきだと主張する。
「(北川氏による性加害について)大阪地検の中でどこまで報告が上がっていたのか。当然、法務省にも報告されるべき事案なので、法務省としてどう対応したのか。
それらの問題点を含めて、被害者が先日の記者会見で話したことを前提に、とにかく何らかの形で第三者機関を設置して、中立、公平な形で事実関係を明らかにしていくしかないと思います。
それに加えて、副検事による情報漏えい、名誉棄損などの疑いを告訴事件として処理するだけではなく、そのようなことが行われた組織的背景についても、第三者調査をすべきではないでしょうか」
配信: 弁護士ドットコム