「歩行者との接触避けたい」車道脇のランニング、実は道交法違反? 弁護士の見解は

「歩行者との接触避けたい」車道脇のランニング、実は道交法違反? 弁護士の見解は

車道脇をランニングするのは道路交通法(道交法)違反なのでしょうか──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

マラソンが趣味という相談者は日頃、近所に公園などもないため、街中を走っています。ランニングのペースが速く、歩道を走っていると歩行者とぶつかりそうになることがあるため、接触事故を避けようと車道脇を走ることもあるそうです。

ところが、ドライバーから「道交法違反ではないか」と指摘を受けたといい、ドライバーに迷惑かけることは本意ではないとして気になっているようです。

弁護士ドットコムニュース編集部の記者も、東京・港区にて歩行者で混み合う歩道を避けるためか、交通量の多い車道を勢いよく走るランナーを何度か目撃したことがあります。すぐ横を車、トラック、自転車、LUUPが走る中、怖くないのかと驚かされました。

気軽に運動できるランニングは広く人気で、街中のそこかしこで見かけますが、歩道があるにもかかわらず車道を走ることは道交法違反になるのでしょうか。竹内省吾弁護士に聞きました。

●歩道の有無で大きく異なる

──車道脇の道を走る事は、道交法違反になるのでしょうか。

歩道(路側帯含む。以下「歩道等」)がある道路では、歩行者は原則として歩道等を通行しなければなりません。

歩道等があるにもかかわらず車道にはみ出して(つまり路側帯も越えて)ランニングすることは、道交法違反に当たります。たとえば、路側帯にランナーがいっぱい詰まっているときに車道にはみ出て追い越すというのは違反になる可能性があります。

なお、歩道等がない道路(路側帯が1mに満たない場合も含む)では、道路脇を通行することは道交法違反に当たりません。しかし、歩道等がない場合には、歩行者は原則として右側通行をしなければいけません。

一方、歩道等がないような狭い道では、歩行者は対向車両から発見しやすいように、道路の右側(対向車両からすると左端)を通行しなければなりません。この点は、自転車は左側通行ですので、混同される方が多いかもしれません。ただし、道路右端の通行が危険で通行が困難なときなどはこの限りではありません。

ランニング中にいつも立ち寄るコンビニが1km先の左側にあるのでずっと左側を走るというのは省エネコースではありますが、道交法違反になる可能性があります。

──違反した場合、ペナルティはあるのでしょうか。

歩道等がある道路において車道にはみ出て通行することは「道交法10条2項違反」です。また、路側帯がない車道の左端を正当な理由なく歩行することも「道交法10条1項違反」になります。

これらの違反行為は、警察官による「通行方法の指示」を受ける可能性があり(道交法15条)、この指示に従わなかった場合には「2万円以下の罰金または科料」を受ける可能性があります(同法121条1項7号)。

ポイントは、警察官による指示を受けない場合には罰則はないということです。つまり誰もいない田舎の狭い道の真ん中を走っても、警察官からの指示を受けなければ、罰金を払うことはありません。しかし、道交法違反となる可能性はあるので注意しましょう。

●事故時の過失割合は車両側に比べ低いが…「休憩場所には注意を」

──車道脇をランニングしている際に車両との接触事故等が起こった場合、事故責任についてランナー側はどの程度負うことになりますか。

歩道等があるケースについては、ランナー側が負う過失割合は原則として以下のようになっています。

歩道等上での接触事故:0%

歩道から1mほど車道にはみ出たところでの接触事故:20%

1m以上はみ出たところでの接触事故:30%

歩道等がないケースでは、以下のようになります。

右側通行中の接触事故:0%

左側通行中の接触事故:5%

道路端から1m以上中央に寄ったところでの接触事故:10~20%

なお、たとえばランニング中についハイペースになってしまい、道路で座り込んで休憩をしている際に接触事故を起こすと、「路上横臥者」として30%、夜間だと50%の過失を取られることがあるので、休憩は歩道上など安全な場所でとることをお勧めします。

【取材協力弁護士】
竹内 省吾(たけうち・しょうご)弁護士
慶應大卒。弁護士法人エース・社労士法人エースクルー代表。銀座を本店に、全国に5拠点を構える。労働分野を中心に、一般民事、家事、企業法務など幅広く扱う。著書に「少年事件ハンドブック(青林書院)」など。趣味は自家製ラー油作りと家具作り。
事務所名:弁護士法人エース
事務所URL:https://ace-law.or.jp/

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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