●「白杖を使っている人=全盲」ではない
意外と知られていないのが「白杖を使っている人=全盲」ではないことです。
マンガが原作のドラマ『ヤンキーくんと白杖ガール』で、だいぶ「弱視(ロービジョン)」という状態があることが知られましたが、人の見え方は人それぞれです。視力が2.0あって細かい文字までよく読めるけれども視野が狭かったり、視野は広いけれど全体的にぼやけていたりする人もいます。
筆者も、とあるロービジョンのスタッフの見え方には、毎回驚かされます。目の前に立って声をかけても気づいてもらえないのに「今日は派手な柄の服を着てますね」と言われることがあるからです。中心視野が失われているので、正面にいると見えないものの、脇に寄ると見えるのだそうです。
視覚障害者と行動していると、彼らの日常を垣間見ることができます。
スタッフと一緒にいると、周囲の人からミーアキャットみたいに伸び上がって注視されることがあるのです。筆者が見えていることはもちろん、みんなだいたい気づいています。「見えないから何をしても気づかれない」というのは恥ずかしい誤解です。
筆者が人混みでスタッフをアテンドしているときは、海を割って歩いたモーセの気分になります。前から来た人たちが白杖に気づき「ハッ!」となって左右に避けてくれるのです。 「白杖で人を転ばせてしまいそうで人混みは怖い」という人は多いので、避けてもらえるのはとても有難いことです。
●白杖以外にも知って欲しいこと
最後に、視覚障害者が視覚の代わりに利用しているものが白杖のほかにもいくつかあるのでご紹介します。
ひとつは盲導犬(補助犬)。立ち入りを断るところも多いようですが、盲導犬は、適性を見極められ、訓練を受けたパートナーです。清潔に保つように、身体障害者補助犬法で定められています。また同法により、飲食店など多くの人が集まる場所でも補助犬の同伴を断ってはいけません。
最近は、支援技術も充実してきました。視覚障害者はスマホを画面の文字を音読させる「ボイスオーバー」という特別な機能を使います。視覚をサポートするアプリも多数あり、スマホやPCは視覚障害者にとって情報収集をするための重要なツールです。
また、点字ブロックは、視覚障害者が安全に外を歩くための大事な道しるべです。これをまたいで駐輪・駐車されていて困ったという声もよく聞きます。
筆者は、待ち合わせをしていたスタッフが駅前の点字ブロックの上で立ち話をしている女性たちに、突撃していくのを見かけたことがあります。設備が有効に使われるかは、私たちの配慮にかかっています。
自分たちの常識だけが、社会の常識ではありません。多様な人たちの事情を知って、多くの人が生きやすい社会になってほしいと願います。
配信: 弁護士ドットコム