言葉は、時代の変化とともに移り変わるもの。かつては当たり前のように使われていた言葉が死語となり、世代によっては通じないこともあります。例えば「巻き戻し」という言葉も、そのうちのひとつ。一体なぜ使われなくなったのか、背景を探ってみましょう。
なぜ「巻き戻し」は通じなくなったのか?
録画したテレビ番組や動画を“戻して見返す”時に、リモコンのどのボタンを押しますか?「巻き戻しボタンに決まっているでしょ」と思った人は、時代に取り残されているかもしれません。実は今どきのほとんどのリモコンには「巻き戻し」ボタンがなく、「早戻し」という表記が主流となっています。
そもそも家庭用のVHSビデオデッキは、1976年に日本ビクター(現・JVCケンウッド)から発売されました。当時、映像を戻すためには物理的にビデオテープを巻いて戻す必要があり、リモコンの「巻き戻し」という表記もこの動作に由来しています。
しかしDVDやブルーレイの普及により、ビデオテープを使う機会は減少。2016年には、国内唯一のVHSデッキメーカーであった船井電機も生産を終了しました。
もはやビデオテープすら見たことがない若い世代には、「巻き戻し」が通じないことも多いよう。SNSでは「巻き戻しって言ったら若い子に通じなかった」「『何を巻くんですか?』と言われちゃった」という悲鳴が続出。「巻き戻しを使うのは、おじさん、おばさんなのか……」と嘆く声も聞かれます。
最近は、映像機器の説明書も「早送り/早戻し」という表記になっているものがほとんど。何気なく見ていると気づかないかもしれませんが、少しずつ表記も変わっているようです。
ちなみに「ビデオをとる」という言葉も、今は「テレビを録画する」とか「スマホで動画をとる」と言わなければ通じないことも。録画媒体の変化は、多くの言葉に影響をあたえているようです。10年後、20年後には、今当たり前に使っている言葉も通じなくなるのかもしれませんね。
■執筆/マツヤマ剛
ありとあらゆる面白情報を収集する雑食ライター。営業職で「トークのタネ」として雑学を集めていたことをきっかけにトリビアに目覚め、一念発起して編集プロダクションに転職。その後独立し、今に至る。特に、生活に関連するような知識には目がなく、日々情報収集に励んでいる。
編集/サンキュ!編集部
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