急に気温が下がったり、そうかと思えば上がったり。
気候が不安定な時期は、肌の状態も不安定になりがち。
どうして季節の変わり目は肌が揺らいでしまうのでしょうか?
今回は、APOLLO BEAUTY CLINIC院長の鬼沢正道先生にお話を伺いました。
季節の変わり目の肌トラブルは多い!その理由は?
季節の変わり目は肌トラブルが多く見られます。
私も美容クリニックを開業していますが、毎シーズン季節の変わり目に肌が荒れるため受診する方が一定数いらっしゃいます。
特に夏から秋にかけての肌トラブルは、他の季節の変わり目よりも多い印象です。
なぜ、季節の変わり目は肌が荒れやすいのでしょうか?
予防や解決策はあるのでしょうか?
これらの疑問にお答えしようと思います。
肌にはさまざまな機能が備わっていますが、特に代表的なものは「バリア機能」、「排泄機能」です。
季節の変わり目は、この「バリア機能」、「排泄機能」の低下により様々な肌トラブルが起こります。
肌トラブルの原因1:バリア機能の低下
まず肌のバリア機能の低下ですが、紫外線ダメージの蓄積、肌の炎症、肌の乾燥、過度な肌への摩擦などが原因として挙げられます。
特に夏は紫外線が多く、通年に比べて肌のバリア機能が低下しがちです。
日焼け止めも要注意で、S P F(Sun Protection Factor)が高いものを使用していても、テクスチャーの悪い日焼け止めだと塗る時や落とす時に肌への過度の摩擦となり、これもバリア機能低下の一因となります。
肌のバリア機能の低下は時間差でやってくるため、夏の間はなんとかバリア機能を保っていても、数ヶ月遅れて10月、11月にトラブルが起こることもあります。
特に11月を過ぎると空気が乾燥するため、肌のバリア機能低下に拍車をかけ、肌トラブルが長続きするという例も散見されます。
肌トラブルの原因2:排泄機能の乱れ
また肌の排泄機能ですが、これは簡単にいうと「ターンオーバー」のことを指します。
ターンオーバーという言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、これは肌の表皮という最外側で起こる皮膚の代表的な排泄現象です。
古くなった表皮の角質が剥け、その奥にある細胞が角化しバリア機能を保つという現象を周期的に繰り返すのですが、通常(個人差はありますが)40~60日程度かけてこのターンオーバーが起こることが理想とされています。
しかし季節の変わり目、特に夏の紫外線によるダメージや、エアコンの寒暖差が影響してターンオーバー周期は乱れると言われています。
すると古い角質や皮脂が肌に留まった状態となり、これらが肌トラブルの元凶になります。
特に今年の秋は例年に比べ残暑が続いているのと、日中の寒暖差がより激しいため、ターンオーバー周期に悪影響を及ぼすことが予想されます。
温度だけでなく湿度の変化もターンオーバーに影響を与えるといわれており、夏の湿気が多い季節から秋以降の乾燥シーズンに移行すると、ターンオーバー周期も変化するため注意が必要です。
夏から秋にかけての肌トラブルが多いのは、このような理由からです。
「バリア機能」の低下で起こるトラブル
バリア機能が低下すると、肌の乾燥や炎症が起こりやすく、肌のゴワつきや痒み、赤み、ヒリヒリ感の原因になります。
バリア機能が低下しているため細菌が皮膚の細胞内で繁殖しやすくなる、普段は悪さをしない皮膚常在菌叢のバランスが乱れトラブルの原因となるなどの現象が見られ、蜂窩織炎(ほうかしきえん)や丹毒(たんどく)と呼ばれる、皮膚や皮下組織が細菌に炎症が起こることも考えられます。
この状態では、皮膚科医に抗菌薬を処方してもらわないと治りが遅れてしまいます。
また、炎症が繰り返すことで炎症後色素沈着というシミに似た黒ずみの原因となる可能性もあります。
赤く腫れる・痛みが強いといった炎症が起きたときは、早めに皮膚科医にご相談ください。
「排泄機能」の低下で起こるトラブル
肌排泄機能が低下すると、古い角質や皮脂が肌に留まると、それが毛穴や皮脂腺を塞ぎ、毛嚢炎(もうのうえん)や白ニキビ、赤ニキビを助長する可能性があります。
ターンオーバーの低下がバリア機能の破綻にも繋がるため、これも悪循環の一環と考えられます。
溜まった古い角質や皮脂を無理やり強いスクラブ洗顔で落とそうとすることも要注意です。
それらの摩擦で逆に肌のバリア機能が低下するなど、悪影響となる可能性があります。
肌のバリア機能が一度破綻すると、これまで使用していて特に問題なかった洗顔や化粧品などにも肌が過敏に反応してしまう可能性があります。
「急にいつもの化粧品が肌に合わなくなった」という経験はありませんか?
それはもしかしたら、季節性の肌トラブルかもしれません。
他にもたくさんある!季節性肌トラブルの原因に
ここまでは「バリア機能」、「排泄機能」に焦点を当てて記載してきましたが、それ以外にも肌トラブルの意外な落とし穴はたくさんあります。
例えばいつも使用している寝具。
夏場に汗をかくと、その汗は寝具に染み付いています。
汗の染み付いた寝具の中では、夏の間にカビやダニなどの微生物が繁殖している可能性があり、それらが寝ている間に我々の皮膚に暴露することで皮膚炎の原因になることがあります。
カビやダニなどの微生物は皮膚トラブルだけではなく、呼吸器感染症を引き起こす可能性もあるので要注意です。
普段から念入りにベッドシーツや枕カバーを洗濯している方でも、季節が変わって陽が短くなると、せっかく洗濯して天日干しまでしても完全には乾燥しきれず、その湿潤環境に微生物が繁殖してしまう可能性があります。
季節の変わり目は、いつもより入念な寝具の乾燥を心がけるのが良いでしょう。
季節の変わり目の肌トラブルは予防できるの?
ここまで代表的な季節の変わり目の肌トラブルとその原因について記載してきましたが、原因さえわかっていればある程度の予防は可能です。
具体的には
・日焼けを極力しない
・肌の乾燥は避ける
・過度な摩擦を避ける
・寒暖差を避ける
といった対策になります。
例えば夏場でも薄手のカーディガンを携帯したり、こまめに日焼け止めを塗り直したり、メイクや日焼け止めの落とし方をいつもより柔らかく落とすよう心がけることも大切です。
秋口以降は肌の乾燥を防ぐことが重要になりますが、漫然といつもより多く保湿剤を使うだけでは足りないケースもあります。
私は医師の立場から、「普通肌」、「脂性肌」、「乾燥肌」、「混合肌」の4タイプに肌の状態を分類し、その方に合った美容皮膚施術を一人ひとりにオーダーメイドしています。
逆にいうと、自分の肌状態に合ったケアをしないと保湿が難しい方も多いのです。
ご自身のスキンケアについて自信が持てない方は、現在の肌の状態について医師にご相談いただくことも視野に入れてみてはいかがでしょうか?
肌トラブルが起こってしまったら、自己流ケアは危険?医師に相談するのが解決の近道!
もし万全の予防をしていても肌トラブルが起こってしまった場合、私のおすすめは「自己判断せずに医師の診察を仰ぐ」こと、これが解決の一番の近道と考えています。
たしかに、季節性の肌トラブルは一過性のものが多く、放置しておいてもいつの間にか症状が落ち着いていることが多々あります。
また市販薬も優秀なものがたくさんあるため、市販薬を漫然と使い続けて治るのを待つ方もいらっしゃるでしょう。
しかし病状を放置してしまうと難治性の状態となりかねません。
炎症後色素沈着などは、治癒に数ヶ月~数年の経過を辿ることもあります。
肌トラブルの原因は本人も気づかない意外なところにあることが多く、究明には入念な問診が必要になります。
この際、いくつかある原因を自身の思い込みで判断してしまうと、毎シーズン同じトラブルに見舞われ大変な思いをするかもしれません。
医師の協力を仰いだ方が、原因究明から治療までのスピードも早く、後々トラブルを長引かせず解決できるかもしれません。
一度季節性の肌トラブルと思われる症状が出た場合、環境や化粧品をガラリと変えるなどはしなくて構いません。
むしろいつも通りのスタイルを変えてしまうと、変えた化粧品などのアレルギーの可能性も疑わなければならず、かえって原因追及に時間がかかる可能性があります。
もし肌トラブルが起こったら、慌てず普段の生活を心がけつつ、早期に医療機関を受診することをおすすめします。
最近は夜遅くまで診療している皮膚科や、オンラインで予約が取りやすい皮膚科も増えました。
自己流のケアの前に、一度近くのクリニックを受診し、相談しやすい医師を探しておくのも良いかもしれません。
これから晩秋、冬を迎え、乾燥のシーズンが到来します。
秋、冬は美味しい物もたくさんありますし、ハロウィンやクリスマス、バレンタインなど素敵なイベントも盛りだくさんです。
季節の変わり目の肌トラブルを解決して、存分に楽しみたいものですね。
[執筆者]
鬼沢正道(おにざわ まさみち)先生
医師
1984年9月19日生
茨城県出身
経歴
2012年 日本大学医学部を卒業
同年 慶應義塾大学病院にて初期臨床研修を行う
2014年 慶應義塾大学整形外科学教室に入職
2016年 大手美容外科クリニックに勤務
2020年 APOLLO BEAUTY CLINICを開業
2023年 医療法人社団賢叡会設立、同法人理事長に就任
現在に至る
APOLLO BEAUTY CLINIC
配信: キレイ研究室
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