授業中の立ち歩きやいたずら 子どもの問題行動はなぜ起きる?

第1回 立ち歩きや集中力の欠如、子どもが問題行動を起こすワケ
授業中の立ち歩きやおしゃべり、いたずら、ケンカなど、小学校の教室内で見られる子どもの問題行動。「お子さんに授業中に不適切な行動が見られるため、家で注意してください」と担任から連絡をもらって初めて気づき、ショックを受ける保護者もいるという。

「問題行動を起こすのは、その場にいるのがつらいからです。つまり子どもにとって嫌なことが学校にあるんです」

こう話すのは、心療内科医師の赤沼侃史(あかぬまつよし)先生。具体的に、どういうことがあるの?

「脳科学的にいうと、知識で得た情報から意識的な行動ができる大人と違い、子どもは『情動』といわれる感情で行動しています。先生による指導は、教育的に正しいという知識から子どもに行動をうながすもの。子どもは先生の言葉によって行動するのではなく、ほめられるためや、叱られることを避けるために行動しています。そのため押さえつけの厳しい先生だと学校という場がつらくなります」(赤沼先生 以下同)

クラスの様子

●大人にとって困る問題行動は、子どもにとって遊びと同じ

本来、子どもは嫌なことは感情に従い避けるものだが、学校は行かないわけにはいかない。嫌な場所から逃げられないと、その場に順応してやり過ごそうとするために、たいていの子どもはまず良い子を演じるという。ただし、それは子どもにとって努力が必要なこと。無理が生じて抱えきれない状態になると問題行動を起こすようになるのだそうだ。

おしゃべりやいたずらなどは、子どもにとって「遊び」と同じで楽しいこと。その場のつらい状況から回避するためにこうした問題行動を起こすのだという。

「嫌なことに対して心が慣れることはありません。ただし、つらいことはアルカリ性と酸性の関係のように、楽しいことや、うれしいことで中和することができるのです」

●先生の指導が厳しいと、ますます悪循環に…

では子どもの問題行動を放っておくと、どうなるの?

「子どもの性格によっても違いますが、そのままにしておくと、エスカレートしてクラスメートをいじめたり、不登校になったりする子もいます」

立ち歩きなどをする問題行動を起こす子どもに対して、授業を進めたい先生は、「膝の上に手を置いて話を聞きましょう」と行動を押し付けたり、叱って直そうとしたりする。これでは悪循環で子どもの問題行動を改善できないのだとか。

「つらいと感じている子どもに対して、指導という締め付けで嫌なことを加えてしまうと、心の負担は解消されないまま、なお負担が増すだけ。ますます反社会的な行動につながっていきます」

ある程度の我慢を強いられることもある学校は、子どもにとって負担になる場所。その分、子どもにとって居心地のいい家の存在は大切なのかも。
(ノオト+石水典子)

お話をお聞きした人

赤沼侃史
向日葵会・心療内科医師。1964年東京大学理科二類に入学、同大学基礎科学科を卒業後、新潟大学医学部に入学、1975年同大学を卒業、医師免許を取得。1982年赤沼外科内科を開設し、それ以後、子どもの心を脳科学的に理解する研究を開始する。雑誌等への投稿論文も多数。ネット上に子どもの心研究所を開設し、さまざまな子どもの心の問題についてカウンセリングを行っている。
向日葵会・心療内科医師。1964年東京大学理科二類に入学、同大学基礎科学科を卒業後、新潟大学医学部に入学、1975年同大学を卒業、医師免許を取得。1982年赤沼外科内科を開設し、それ以後、子どもの心を脳科学的に理解する研究を開始する。雑誌等への投稿論文も多数。ネット上に子どもの心研究所を開設し、さまざまな子どもの心の問題についてカウンセリングを行っている。
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子どもの不登校、引きこもりなどは多くの場合、親や教師の常識が子どもを窮地に追い込むことで起きているという。心療内科医師である著者が、解決法を伝授する。
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1,028円
開業医師として子どもの心の問題に取り組んできた著者が、脳科学的な見地から子どもの心を説明し、子どもに最も適した子育て、楽しくて納得がいく親の人生をアドバイス。
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子ども論
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医師として子どもの心の問題に取り組んできた著者が、脳科学的な見地から説く、心が辛い子どもへの対し方を伝える。
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