「笑ってる出演者にも引く」批判殺到の『水ダウ』悪質いじめ企画…“コンプラ以前の問題”に広がる嫌悪感

「笑ってる出演者にも引く」批判殺到の『水ダウ』悪質いじめ企画…“コンプラ以前の問題”に広がる嫌悪感

坂本龍一氏が指摘したダウンタウン的な笑いの問題

 次に、倫理的な面。

 ベストセラー小説『永遠の仔』で知られる作家の天童荒太と坂本龍一の対談本『少年とアフリカ』(文藝春秋 2001)の中で、ダウンタウン的な笑いが映し出す社会の問題を、坂本氏はこう指摘しています。

この投稿をInstagramで見る

Tin Drum(@tindrumio)がシェアした投稿

<ここ二、三年のダウンタウンの芸って、年下の芸人をいたぶってるだけで、一言で言うと、「どんくさいやつをいじめてなにが悪いの」ってことでしょ?>(p.118)

 と、開き直りを正当化する芸風の危うさを論じ、さらなる過激化を懸念します。

<「いじめてなにが悪い」から「人を殺してなにが悪い」に行き着くのは早い。>(p.120)

 なぜなら、ひとたび「いじめてなにが悪い」という刺激に慣れてしまい笑えなくなれば、人はそれ以上のものを求めるようになるからです。

 いじめから殺人への移行は、決して論理の飛躍などではなく、必然的にやってくる破局である。パンドラの箱をダウンタウンは開けてしまったのではないかと、坂本氏は言っているのです。

“いじめ”でスタジオが笑う水責め企画


 水責め企画も、この延長にあることは明らかでしょう。対談から20年以上経った今も、同じ様な“いじめ”でスタジオが笑う。何も変わっていないのですね。

 議論を呼ぶ企画で話題の『水曜日のダウンタウン』ですが、今回ばかりはとうとう一線を越えてしまったように思います。

<文/石黒隆之>

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

関連記事:

女子SPA!
女子SPA!
女子SPA!は出版社・扶桑社が運営する30~40代女性向けのWebメディアです。恋愛、結婚、仕事、育児、さまざまな人間関係や価値観など…“リアルを生きる女性たち”に役立つ情報をお届けします。
女子SPA!は出版社・扶桑社が運営する30~40代女性向けのWebメディアです。恋愛、結婚、仕事、育児、さまざまな人間関係や価値観など…“リアルを生きる女性たち”に役立つ情報をお届けします。