インフォマートは10月24日、WHAT CAFE(品川区)で体験型カンファレンス「FOODCROSSconference2024」を開催した。「フード業界にデジタルツール活用と革新」をテーマに、業務全般を効率化するためのコンテンツを多数そろえ、外食飲食店・食品卸・メーカーなどフード関係者にデジタル活用を呼びかけた。
先行企業のデジタル活用事例を学ぶ「DX アワード」(卸部門)には、札幌協和(北海道)、金城商事(沖縄県)、クサマ(東京都)の3社が登壇。来場285名、オンライン167名の合計452名が聴講した。聴講者のアンケートの結果、札幌協和が最優秀賞を受賞した。
札幌協和は、かにや帆立、いくらなどを扱う北海道の水産卸売業者。社員11名で売上高は約60億円。齊藤隆幸代表は、冒頭、「国産品は価格の高い海外へ流出し、海外品は他国に買い負けている」と日本の水産品調達力の問題を指摘。「今後は、高単価の在庫保有が必須になる。スケールメリットの商いでは外的要因に影響されやすく、相場変動のリスクが多すぎる。流通の川上だからこそ得られる精度の高い情報をデジタル活用し、お客様に広く提供することが求められる」と語った。
それから、デジタルを活用して2年間で売上高2億円を達成できた理由を説明した。同社では、2022年に外食部を立ち上げ、クラウド販売管理システムを開発。LINE を連携させ、受注からピッキングリスト作成、送り状発行、出荷指示まで全てデータベースで管理した。関東から東北エリアの海鮮問屋をターゲットにDM 配布をスタート。LINE 友達になってもらうことで、商品情報や価格を配信。従業員2名で顧客件数100店舗、売上1億円を達成した。
続く2023年には、クラウド販売管理の受注画面をお客様が発注しやすいように開発。エリアとターゲットを全国へと拡大し、DM配布による集客を強化し、同じ人員で顧客件数200店舗突破。売上2億円を達成した。その後、自前の受発注システムに限界を感じていたため、インフォマートのTANOMUを導入。DM 配布エリアの拡大により、顧客数は500件に増加した。TANOMU は飲食店からの受注や販促に特化したサービスで、留守番電話やFAX、LINE などのバラバラの受注を一本化する。複数の受注管理が不要になり、入力業務も簡便化するもの。
同社は今後、DM配布に加えてSNSでの広告活動を行い、販促を強化する。また、国内外の協力工場とOEM製造、PB製品を開発し、素材を活かした製品づくりをすすめ、5年後には、売上高100億円を目指すという。齊藤代表は最後に「人とデジタルの融合の可能性は無限大だ」とデジタルの有効性を強調した。
金城商事は、沖縄県にある総合食品卸問屋。デジタル活用前は、一人ひとりの業務量が多く、営業も受注入力作業のため、早出出社は当たり前で、営業活動ができないことが課題だったという。そこで、金城光成社長は、課題解決にはデジタルが必要という声をキャッチし、デジタル促進に向けた社内プロジェクトチームを発足。営業部、物流部、仕入れ部、システム部から合計13名の組織を編成した。社内の誰かがやるのを待つのではなく、まずは「やる」意識を共有することで、スピード感を持って対応を進めた。多くの営業担当者がLINE での受注が課題となっていたため、TANOMU を導入。その結果、受注作業の時間が50%まで削減。新たな作業が可能になり、新商品案内や値登壇した上げ説明などの機会を創出できたという。登壇した営業担当者は、「トップダウンとボトムアップの2つで進めるのがDX 推進のカギだ。きっかけはトップダウンだが、現場からしっかり声を伝える環境ができたからうまく回っている」と語った。
クサマは、東京都や神奈川県の飲食店等に食材を卸す業務用食品卸問屋。FAX・電話などアナログな受注をやめて、取引先からの受注がWEB でまとめられるBtoBプラットフォーム受発注ライトを導入することで、アナログ受注の50%以上を電子化した。さらにTANOMU も導入することで、4%まで削減した。登壇者は、社外推進の工夫点として、「システム導入後、営業から得意先を紹介してもらうだけではなく、事務担当者など意義を理解している人が率先して店舗を訪問して直接伝えることが大事。得意先の納得を得られる」と語った。
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB