警察官のカメラ着用、試験導入…「撮られたくない人」置き去りでいいのか? 弁護士「かなり課題ある」と懸念

警察官のカメラ着用、試験導入…「撮られたくない人」置き去りでいいのか? 弁護士「かなり課題ある」と懸念

●(b)交通違反の取締りの際の録画、(c)花火大会などの雑踏警備の際の録画について

交通違反の取締りの際の録画については、たとえば、交通違反が多発する地域・場所【21】以外での録画の場合には、釜ヶ崎監視カメラ事件判決の(2)客観的・具体的な必要性、(4)設置・使用の効果の存在、(5)使用方法の相当性等の要件が問題になりうるでしょう。

また、花火大会などの雑踏警備の際の録画については、イベント等の規模にもよるのでしょうが、同様に、同判決の(2)、(4)、(5)等の要件が問題になりえます。

●今回のケースを考える上で注目したい直近の裁判例

花火大会などの雑踏警備の際の録画のケースではありませんが、警察が個人の情報を保有し、第三者に提供したことだけではなく、個人の情報を収集したこと自体が違法であるとして自治体の国家賠償責任を認めた2024年9月の名古屋高裁の判決【22】も、本件の警備の際の録画の場合等の関係で、重要な判決だといえます。

この裁判例は、「何ら犯罪性や、公共の安全や秩序に対する危険性も認められない」原告らの活動について「市民運動やそのほう芽の段階にあるものを際限なく危険視して情報収集し監視を続けることが、憲法による集会や結社、表現の自由の保障に反することは明らか」である旨判示しているようです【23】。

この裁判例や先の釜ヶ崎監視カメラ事件判決に照らすと、たとえば「警備」と称して、警察官のウェアラブルカメラで、犯罪性や、公共の安全や秩序に対する危険性のない個人の行為・活動を継続的に録画すれば、違法になる場合も出てくるでしょう。

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