GPS監視、飲み会禁止…厳しすぎる「婚前契約」の有効性は? 「浮気したら財産没収」との爆弾に怯える夫

GPS監視、飲み会禁止…厳しすぎる「婚前契約」の有効性は? 「浮気したら財産没収」との爆弾に怯える夫

結婚前に「浮気したら財産を全部没収」という契約書にサインしましたが、妻の浮気チェックが厳しすぎてもう無理です──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の男性は、結婚する際に、「浮気したら財産の全部没収」という婚前契約書にサインしました。この婚前契約書は、相談者が交際中に一度浮気したことを受けて作成されたそうです。

その後、相談者は、妻からGPSをつけられたり、女性との会話をチェックするために仕事中の様子を録音させられたり、遊ぶ友達を選ばれたり、女性がいない職場への転職を促されたりなどしています。もちろん飲みになど行けませんし、飲みに行きたいなどと言えば一日中罵られます。

相談者は結婚生活に限界を感じており、離婚を考えているといいますが可能でしょうか。また、このような婚前契約書の効力は生じるのでしょうか、山口政貴弁護士に聞きました。

●「財産全部没収」の婚前契約は無効になる可能性も

——婚前契約書には法的効力はあるのでしょうか。

婚前契約書というのは、結婚前に夫婦間の約束を取り交わした書面のことですが、基本的には法的効力を生じます。その中でも、夫婦の財産に関する契約については「夫婦財産契約」という名前で呼ばれ、民法でも規定されているものになります。

——婚前契約書を作成することにはどんなメリットやデメリットがありますか。

夫婦の財産は法律上基本的には共有すなわち2人のものと決められていますので、この財産だけは共有にしたくない、といったような取り決めができるのが婚前契約書の最大のメリットでしょう。

また、婚前契約書の作成は結婚に向けての「セレモニー」という側面もあるでしょう。

デメリットとしては、結婚後予期せぬできごとが起こった時でも、婚前契約の内容に拘束されてしまうということです。

——「浮気したら財産の全部没収」という婚前契約は有効なのでしょうか。

婚前契約に限らず、すべての契約は「公序良俗に反するものは無効」と民法で定められています。

つまり、日本の社会において到底受け入れがたい内容の契約は、たとえ双方が合意していても法律上無効にする、というものです。たとえば、犯罪をする代わりに報酬を支払う、などいう契約がこれに該当し、無効となります。

問題は「浮気したら財産の全部没収」という内容が公序良俗に反するかどうかですが、あくまでケースバイケースではありますが、浮気によって離婚した際の慰謝料は一般的には200~300万円程度になることが多いです。

その額をはるかに超えるような財産を没収するという内容の婚前契約は無効になる可能性が高いでしょう。

——相談者は離婚も考えているようですが、何かしておくべきことはありますか。

離婚するためには何はともあれ別居することです。

妻との結婚生活に限界を感じているのであれば、すぐさま別居し、ある程度の期間が経過してから離婚調停を申し立てるのが最善かと思われます。

【取材協力弁護士】
山口 政貴(やまぐち・のりたか)弁護士
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。
事務所名:神楽坂中央法律事務所
事務所URL:http://www.kclaw.jp/index.html

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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