不可能を限りなく可能に近づける人
映画でもテレビドラマでもよく人間の心理を写すという言い方がある。でも実際そんなものは画面上には写らない。というか写しっこない。だって画面上にはただ、あるキャラクターを演じる俳優の物理的な身体が写るばかりだからである。
それでも俳優は、心理らしきもの、あるいはそれに近いものを演技によって表現しようと苦心する。役作りにおいては自分の性格と演じる役柄との共通点などを探る作業もあるが、俳優の内面そのものが画面上に写ることは基本的には不可能である(映画と心理については菅田将暉主演映画『Cloud クラウド』公開記念インタビューにて黒沢清監督が語っている)。
にもかかわらず、ある種の俳優の演技を見たとき、そこにふと俳優本人の人柄をいやがおうにものぞいてしまったと感じてしまうことがある。菅生はまさにそうした特別な才能のひとりであり、不可能を限りなく可能に近づける人だと思う。
確かに目立つ演技をする人ではない。兄の菅田将暉なら、たとえば『Cloud クラウド』で内面をはるか超越した外面の極地に到達している。『おむすび』の菅生新樹は、これから半年間レギュラー出演する間に、どんどん如実に目立ってくると思う。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
配信: 女子SPA!
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