先日、大手ハンバーガーチェーンが店員の髪色に関する規定を撤廃したことがニュースになりました。介護業界でも同様に、スタッフの派手な髪色を認めるケースが増えて来ています。
日本では「派手な髪色=不真面目な人」という印象があります。
特に、年齢が高い人ほどそう考える傾向が強いのではないでしょうか。80代、90代といった他の産業とは違う人を相手にする介護業界では、一般の企業以上に髪色に厳しい規定を設けるのは自然なこととも言えます。
また、昔は髪の毛を金色などに染めている日本人は少なかったですから、認知症の高齢者の中には「金髪=外国人」と認識してしまう人もいます。
特に戦争を経験した高齢者の中には「外国人は怖い」と教え込まれた頃の記憶が残っていることも考えられます。利用者に安心してもらうためにも黒やそれに近い色を就労の条件とするのは、考え方としては理解できます。
しかし、近年は高齢者でも派手な髪色に対して否定的な印象を持つ人は減ってきています。
また、現実として介護現場で外国人が働くことが一般的になったこともあり、多様性を尊重する観点からも髪色の規定を撤廃する介護事業者が増えています。
また、この背景には、人手不足が深刻な中で、少しでも多くの人に採用の門戸を広げようという狙いがあります。
髪色を自由化しているある介護事業者は「髪の毛の色は単なる外見だけの問題であり職務能力には何の影響もない。『自然な髪色でない』というだけで採用対象から外すのは、企業にとって損失でしかない」と語ります。
こうした髪色をはじめとする服務規程の緩和は、人材の採用面以外でどのようなメリットがあるのでしょうか。
まず、髪色などにこだわる人は、総じてそれ以外のお洒落にも興味があると言えます。
そうした人がスタッフに占める割合が増えることで、事業所全体の美意識が上がるという点が挙げられます。
これまで介護の現場ではお洒落はタブーでした。そして、そのことを「身だしなみに無頓着でもいい」と曲解するスタッフがいたのも事実です。
その結果、「社会人として、それはどうなの?」という姿で働く人も散見されました。私も記者として現場スタッフにインタビューする機会が多くありましたが、「写真を撮影します」と事前に伝えているにもかかわらず、ノーメイクや大きな寝ぐせが就いたままで登場する人もいました。
そうした人たちが身だしなみに気を付ける風潮が強くなり、来訪者に不快な思いをさせるケースが減ることが期待できます。
また、自分のお洒落に気を配るようになれば、利用者の身だしなみにも自然に意識が向きます。「髪の毛がボサボサだから整えてあげよう」などという行動が自然にできるようになり、利用者のQOL向上が期待できるでしょう。
そして、仕事に向きあう姿勢も変わってきます。
派手な髪色で勤務している、ある男性介護士は、染める際に勤務先の社長に相談したところ、反対はされませんでしたが「目立つ分、より周りからの視線は厳しくなる。今以上に仕事の質が求められることになる」と言われたそうです。
先ほども述べたように、日本ではまだ「派手髪=不真面目」という印象を持つ人もいます。
他のスタッフと同じミスをしたとしても、派手髪の人ほど「見た目ばかりに気にしていて、ちゃんと仕事をしていないからだ」という非難の声も強くなることが考えられます。
そうした批判を受けないようにするためにも、業務においては細心の注意を払い、より安全に、そして高い成果を出すようになると思われます。
介護の三ツ星コンシェルジュ
配信: 介護の三ツ星コンシェルジュ
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