銀座フェンディ店員が外国人客に「土下座謝罪」か SNS投稿が波紋、カスハラ専門弁護士「企業は断固たる姿勢を示せ」

銀座フェンディ店員が外国人客に「土下座謝罪」か SNS投稿が波紋、カスハラ専門弁護士「企業は断固たる姿勢を示せ」

●来年から始まる「カスハラ条例」にも違反する可能性

——女性の行為は、来年施行される東京都カスハラ防止条例にも違反すると考えられますか

東京都カスタマーハラスメント防止条例(カスハラ条例)は来年4月1日に施行となります。施行後に今回のようなトラブルが発生した場合、以下のように条例違反になる可能性があります。

カスハラ条例は、顧客、就業者、事業者のそれぞれにカスハラを防止する責務を定めたものです。

顧客に関しては「就業者に対する言動に必要な注意を払うよう努めなければならない」という責務が定められています。

女性による「SNSへのアップ」という行為も、「顧客と就業者とが対等の立場において相互に尊重する」という基本理念に照らせば、この責務に違反します。

また、仮にストールをはぎ取られたことが真実であったとしても、「ひざまずいての謝罪」という行動は過剰なものであったと思います。

女性は強要したわけではないと主張しているようですが、仮にそれが女性の言動から促されたものならば、これも顧客の責務に違反する可能性があります。

●一般的だった接客スタイルは「過去の話になった」

——カスハラ条例は企業の責務も規定しているのでしょうか

次に、カスハラ条例は、事業者にも「顧客に対し、カスハラの中止の申入れその他の必要かつ適切な措置を講ずるよう努めなければならない」「カスハラを行わないように、必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。

すでに述べたように、女性の「SNSへのアップ」という行為は、店員らへの名誉毀損罪が成立する可能性がありますから、これを会社が傍観してよいはずがありません。

会社としては、女性に対して「今後の入店を拒否する」と通知するとともに、「SNSの投稿の削除」を強く求めることが必要だと思われます。仮にそのような措置を怠っていたならば、事業者としての責務に違反する可能性があると言えるでしょう。

また、どんな理由があったにせよ、「ひざまずいての謝罪」が接客業務として妥当なものだったとは言えません。

仮に会社側が「ひざまずいての謝罪」も接客業務の一環として容認していたのであれば、現場従業員の尊厳を踏みにじっていると言っても過言ではなく、接客のやり方に問題があったと言わざるを得ません。

たしかに過去には、「ややこしい顧客をうまくさばいてくれ」という姿勢で、”うまいカスハラ対応”も従業員の接客業務の一環だと位置付けている会社もありました。しかし、もはやそういう時代ではないのです。

「ひざまずいての謝罪」という接客対応がどんなに効果的なカスハラ対応であったとしても、カスハラ条例の「顧客と就業者とが対等の立場において相互に尊重する」という基本理念に照らすと、会社がそういった接客対応を容認することは事業者としての責務に違反する可能性があるのです。

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