感電の治療
感電の治療について、蘇生処置、全身管理、局所治療に分けて説明します。熱傷の治療に準じますが、異なる点もあります。
蘇生処置
感電で心肺停止に陥った場合は、胸骨圧迫やAEDによる蘇生処置を行います。
雷にうたれた場合は、ほかの原因による心肺停止よりも蘇生に成功する確率が高いとされており、すみやかな蘇生処置が特に重要です。
全身管理
通電による体内の損傷が疑われる場合や、熱傷の範囲が広い場合は慎重に全身管理を行います。
体内の組織や筋肉が損傷すると、腎臓の障害が起こり得ます。
腎障害を防ぐためには大量の点滴が必要です。
熱傷から感染が起きれば、抗菌薬の投与も行います。
全身の状態を観察しながら、状況に応じた治療を選択します。
局所治療
体表面に見える熱傷の治療は、通常の熱傷と同様です。
応急処置としては、流水で可能な限り冷やすのが大切です。
医療機関では傷の状態に応じて、創傷被覆材や軟膏で治療を行います。
広範囲が深くまで損傷した場合は、外科治療が必要となる場合も少なくありません。
損傷部位で内圧が高まる場合は、血管や神経が圧迫されないように、減張切開と呼ばれる外科的処置を行うことがあります。
損傷した組織が壊死すれば、外科的に切除する場合もあります。
血管の損傷によって血液が末梢まで届かなくなれば、四肢が壊死に至るかもしれません。
切断を余儀なくされ、義肢の装着やリハビリテーションが必要となるケースもあります。
感電しやすい人・予防の方法
電気設備に関わる仕事をしている人や乳幼児は、感電のリスクが高いといえます。
業務上および日常生活における感電対策と、落雷への対策を確認しましょう。
業務における感電対策
感電による労働災害は、以下のような対策を着実に実行することで予防につながります。
電気機器や配線の絶縁を良好に保つ
作業手順を遵守する
漏電遮断機を使用する
接地を確実に行う
毎年8月は電気使用安全月間と定められ、電気安全に関する注意喚起と啓蒙活動が行われています。
日常生活における感電対策
感電を予防するには、濡れた手で電気器具やコンセントを触らない、壊れている電気器具を使わないといった対策が有効です。
乳幼児の感電対策では、以下のような対策が考えられます。
家電を手の届く所に置かない
コードが外れない製品を選ぶ
使っていないコンセントを家具などで隠す
コンセントにはめこむキャップは、生後6ヶ月未満の子どもでも外すことができたとの報告があり、過信しないことが大切です。
屋外では電線のほか、電車の架線も危険です。
切れた電線に近寄らない
電線の近くで凧揚げなどをしない
駅ホームで長い物を掲げない
落雷への対策
落雷に関しては、気象情報の確認が一番の予防策です。
雷注意報が出ている場合や雷雲が近づいている場合は、屋外でのスポーツやレジャーをためらわず中止してください。
雷が鳴っているときは、以下のような場所に避難しましょう。
建物の中
金属に囲まれた場所(車の中、鉄塔の下など)
建物の中ではコンセントから落雷電流が入り込むケースもあるため、コードのつながった家電製品からは離れておきましょう。
雷は高い物に落ちやすいため、完全に接地された電柱の近くは安全といえます。
しかし、接地されていない柱や高い木などからは、側撃雷が飛んでくることがあるため、近付きすぎてはいけません。
また、雷は地面を這うこともあります。
やむを得ず屋外で待機する場合は腹ばいにならず、しゃがんで身を低くしましょう。
地面からの電流が心臓に届きにくくなります。
参考文献
電撃傷|医学用語解説集|日本救急医学会
電撃傷|日本創傷外科学会
創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)|日本皮膚科学会
感電災害の防止対策|日本電気技術者協会
感電の基礎と過去30年間の死亡災害の統計(2009年)|独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
いたずら防止用コンセントキャップに関する調査平成 24 年 6 月東京都生活文化局消費生活部
コンセントに鍵を差し込んだことによる手掌電撃傷|日本小児科学会
高圧電流による電撃傷の 4 症例(日救急医会関東誌43(4),2022年)
両側下腿切断を要した電撃傷の1例(仙台市立病院医誌20,7174,2000)
雷から命を守るための心得|日本大気電気学会
配信: Medical DOC
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