●子ども自身は「刑事責任」を負わないが・・・
キックした子ども自身は、14歳未満ですから、刑事未成年であり、刑事責任は負いません(刑法41条)。
先ほど書いたように、もしもコーチが「いけ!」という指示をしていた場合には、子どもはコーチの指示に従って攻撃を加え、子どもが負傷したといえそうです。
この場合、指示したコーチに傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立する可能性があります。
なお、空手の大会という試合の流れの中での負傷であれば、違法性が阻却されて、傷害罪は成立しないと考えられます。
しかし、今回のケースは、仮に「いけ!」という指示があったのだとすれば、動画の流れを見ると、被害を受けた子どもが顔を押さえて後ろを向き、明らかに試合が止まったあとに、蹴った子どもに対して、背後から攻撃することを指示していることになります。
このような攻撃はルール違反であることが明らかですし、後遺症を残しかねない非常に危険な攻撃ですので、とうてい試合の中でのこととして、違法性が阻却されるようなものではないと考えられます。
したがって、コーチ自身が傷害罪に問われる可能性があると考えられます。
礼節を重んじるはずの空手道の大会で、このような痛ましい事態が起こってしまったのはなんとも残念なことです。被害に遭ったお子さんの回復を強く願うとともに、加害してしまった子どものケアも必要だと感じます。
配信: 弁護士ドットコム