ホスピス住宅の訪問看護不正疑惑に新たな動き 厚労省が取扱い方針について通達 その①

ホスピス住宅の訪問看護不正疑惑に新たな動き 厚労省が取扱い方針について通達 その①

 2024年の介護に関する大きなニュースと言えば、「いわゆる『ホスピス住宅』などの医療対応が必要な人を対象にした高齢者住宅において、必要以上の訪問看護が提供されている」と大手メディアが報じた件が挙げられるのではないでしょうか。

 この問題については、厚生労働省が10月22日に都道府県などに対して「指定訪問看護の提供に関する取扱方針について」と題した通達を発出するなど、新たな動きを見せています。

 今回は、この問題について詳しく検証していきます。まずは、これまでの報道を振り返ります。

 一連の報道はすべて同一のメディア(以下:A社)が報じています。

 第一報は6月17日に「ホスピス型住宅、看護で不正 報酬目的、過剰に訪問」と題し、具体的な社名を出さずに報じられました。

 記事中ではホスピス住宅を運営する大手事業者で勤務経験のある看護師が「記録上はどの入居者も1回30分、複数人での訪問となっていたが、実際には5分で終わる場合もあった。複数人訪問が必要だったケースも一部」と証言し、訪問の実態とかけ離れた記録が作成され、それに基づいて不正な請求が行われていた可能性について言及しています。

 具体的な社名が報じられたのは6月23日のことです。

 関西を中心に展開するB社の有料老人ホームの入居者に対し、B社グループ会社の訪問看護ステーションが必要性に関係なく過剰な訪問看護を実施していたとしています。

 当のB社は取材に対し「指摘のような事実はない」と否定しています。

 9月2日には株式を上場する大手事業者C社について「同社の訪問看護ステーションでは、社内マニュアルで『1日3回』『複数人での訪問』を『必須で入力』することになっている。

 訪問看護の回数や訪問する職員数は、本来は患者の身体状況などに応じて判断されるものであり、全社的に過剰な訪問介護で報酬を請求している」と報じています。

 これに対しC社は翌9月3日、A社からの質問に対する回答書を自社ホームページ上に公開しました。

 内容は「約95%の入居者が1日3回の訪問看護を受けているが、訪問回数については適切な訪問看護指示書を作成し、入居者及び家族の同意を得ている」「入居者の約9割が複数名訪問を利用している。これも、その必要性に応じて利用者・家族と協議の上で実施しているものであり、主治医に都度確認を行っている」というものです。

 その上で「今回の報道のように逸脱した行為があった場合には、算定基準を満たしていないものとして保険請求を行わない、もしくは事後に発覚した場合は保険料返還を行っている」と主張し、A社に対して「法的な根拠のない報道であり、訴訟を含めた法的措置を検討する」と全面対決も辞さない姿勢を示しています。

 また、C社は9月20日に「今回の報道において指摘された内容の事実関係、問題の有無の明確化のため、外部有識者による特別調査委員会を設置する」と発表しています。

 9月3日には、別の運営事業者D社についても「必要性に関係なく100%複数人訪問とするよう全社的な指示があった」「1人で訪問した場合でも複数人で訪問した旨の虚偽の記録を作成していた」と診療報酬を不正に請求していたと報道します。

 翌日D社は、ホームページ上に「複数人・複数回の訪問看護の実施については、それが必要な利用者に対しても社内体制の問題から実施できていないケースがある。そうした人たち全てに対応できる社内体制の整備を目的に目標値を定めたものであり、複数人・複数回の訪問看護が不必要な人にまで実施を求めたことはない」との旨のコメントを発表しました。

 そしてC社と同様に、A社に対する法的措置も辞さない姿勢を示しています。

 このように、3社ともA社の報道を全否定しています。(その②に続く)

介護の三ツ星コンシェルジュ

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