単身赴任者の帰宅旅費手当にもジェンダーの視点を
施工管理の仕事は、どの工事を担当するかによって働く場所が変わります。受注した工事が年単位で行われるため、1~2年のサイクルで勤務地が変わることもあるそうです。
また、災害などにより緊急の復旧支援が必要な際、急遽派遣されるケースもあるといいます。転勤が必然的に多くなる職種でもあることから、戸田建設では単身赴任者には帰宅旅費などの手当がありますが、2021年12月にLGBTQの同性パートナーシップ制度が導入され、異性婚と同様に同性パートナーも社内制度を利用できるよう改訂したと聞き驚きました。
さらに、今年度には同性パートナーも土健保(健康保険)に加入できるようになったそうです。
また、トランスジェンダーの方のために、ビジネスネームの利用制度もあるのだそうです。一歩進んだ取り組みに、非常に感銘を受けました。
戸田建設のように、性的マイノリティの当事者が福利厚生制度を利用しにくいということがないよう、見直しを行う企業事例が日本国内でも広がっています。
就業規則を改定し配偶者に関する記述を「配偶者またはパートナー」に変更したという事例や、結婚祝い金・弔慰金・慶弔休暇の適用などの事例もあります。
従業員が福利厚生の各種制度を利用する場合に、申請方法や情報の取扱い、情報を知りうる人の範囲について配慮するなど、意図せざるカミングアウト(またはアウティング)につながらないような手続き方法の見直しなども必要で、誰もが働きやすい職場環境の実現にはLGBTQの視点も必要だと改めて考えさせられました。
女性の意見も取り入れた「環境づくり」の工夫
工事現場の責任者である作業所長は、工事現場の近くに設置される事務所の設備や環境づくりにも手腕を発揮されるのだそうです。視察させて頂いた事務所は、入口にはデジタルサイネージが設置され、音楽とともに明るい雰囲気を生み出しています。書類作成などデスクワークのための事務作業部屋は、温かみのあるサイドボードや装飾でアットホームな空間に。打合せ用の部屋は、おしゃれな壁紙や照明器具でまるでカフェのようで驚きました。
夜間工事を行う場合にと設けられている仮眠室もゆったり過ごせるようなスペースとなっていました。近年、現場で働く女性が増えているため、更衣室は男女別に1階と2階に分けて設置することで音など気になる点にも配慮したといいます。シャワー室やトイレ、洗濯機なども更衣室にそれぞれ設置されていました。
作業所長の木下真二さん(札幌支店・土木工事部工事室上席主管)に、こうした事務所の環境づくりや工夫に至った経緯を伺いました。
「大規模工事など工期が長い場所でも、快適に過ごしながら、コミュニケーションがとりやすい環境づくりを心がけています。前勤務地だった大阪で“現場で汗をかいたまま通勤電車に乗るのは抵抗がある”などの女性社員の声を耳にし、ハッとしました。シャワー室の設置や、洗濯機を男女別にそれぞれ用意する必要性など、これまでの勤務地での経験や「気づき」を一つずつ改善につなげていった結果が今の現場にいかされているのだと思います。」
女性社員の声に耳を傾け少しでも快適に働いてもらいたいと工夫を重ねてつくられた環境は、これまでの建設現場のイメージを大きく覆すような驚きがたくさんありました。
「建造物の完成は、自分が関与したことに誇りを感じることが出来る瞬間」だと皆さんおっしゃるように、私たちの生活に欠かせない道路・橋梁・トンネルの建設は、どれも社会インフラを支える魅力のあるお仕事だと思います。
人の流れや交通量のコントロールなど町づくりの視点からも必要不可欠な道路整備。私たちの生活を支える建設業の現場で活躍する皆さんの笑顔を、ぜひ多くの方にも知ってほしいと思いました。
配信: SODANE