2017年「人を笑わせ、考えさせてくれる業績」に与えられる、イグノーベル物理学賞を受賞した「猫=液体説」。その趣旨は「猫は容器に合わせて体形を変えられるので液体も同然?」というものでした。
「猫が液体のようにしなやかなのは、体のしくみや習性と関係がある」というのは、哺乳動物学者の今泉忠明先生。そこで、猫の体のしくみや習性という観点から、「猫=液体説」について詳しく解説していただきました。
柔らかさの秘密は骨の数にあり
入った容器の形に合わせて、丸くなったり四角くなったりできるほど、猫の体が柔らかいのは、骨格に特徴があるから。人の体が約200個の骨からなるのに対し、猫の体の骨はなんと約240個。骨が多いぶん関節の数も増え、可動部分が多くなることで、より柔軟な体勢になれるのです。
発達した三半規管と前庭器官がカギ
猫が狭い場所の上でも絶妙な体勢でバランスを保っていられるのは、優れた平衡(へいこう)感覚をもっているから。動物の耳の奥には、平衡感覚をつかさどる三半規管と前庭(ぜんてい)器官がありますが、猫はほかの動物に比べると、これらの器官が発達しているのです。