猫の尿石症|症状から治療法まで現役獣医が解説

猫の尿石症|症状から治療法まで現役獣医が解説

「尿路疾患」や「尿石症」は、猫ちゃんを飼っていると一度は目や耳にする言葉です。場合によっては、命に関わる緊急事態にも直結する「尿石症」をここで解説していきます。

尿石症の検査

身体検査

膀胱に尿が貯まっている状態なのかどうかを確認するのは、尿閉の可能性を考えるととても重要な診察の一つです。

基本的には触診で膀胱を触って判断しますが、超音波検査を用いて画像を確認することもあります。

尿検査

尿の状態(濃さや成分、沈殿物、血液が混じっているかなど)を検査することで、尿石の成分や感染を併発しているかなどが判断できます。

しかし膀胱炎を起こしている状態だと、膀胱に尿が貯まっておらず、検査するのに十分な量の量を採取することが困難です。

その場合、抗生物質療法や療法食の処方を先んじておこなうことがあります。

治療を先行した場合にも、治療にしっかり反応しているかどうかを確かめるために、治療後の尿検査が重要になってきます。

尿の採取方法は

膀胱から穿刺採尿(超音波検査で膀胱を確認しながら、針を刺して膀胱から直接採尿すること)

尿道にカテーテルを挿入して採尿

自然に排尿したものを採る

などいくつかの方法があります。

それぞれにメリット、デメリットのある方法ですので、猫ちゃんの状態に応じて動物病院で判断して実施します。

画像検査

レントゲンを撮ることで、腎臓や膀胱内の結石を確認することがあります。

しかしレントゲンに写らない種類の結石もあるため、写ってないからといって結石がないわけではありません。

また、超音波検査をおこなうことでレントゲンには写らなかった結石や細かい砂状の結晶を確認したり、腎臓の状態を確認することもあります。

血液検査

特に尿閉の状態では、腎臓への負担の度合いによって治療内容が変わってくることがあります。

食欲不振など全身状態で気になることがある場合、血液検査をおこなうことがあります。

尿石症の治療

内科療法

感染が併発している場合、抗生物質の投与を行います。

他の疾患で抗生物質の投与が行われている場合や、膀胱炎の再発を繰り返している場合などは、効果のある抗生物質を判断するために、尿の細菌培養検査や薬物感受性検査をおこなうことがあります。

療法食

感染がなく、尿石が確認できた場合には療法食を勧める場合があります。

体質によって尿石を作りやすい子がいるため、結石を作りにくい尿を作るためのフードが開発されています。

また、尿をできるだけ多く作って排出させるために、お水をよく飲んでくれるようなフードの味付けになっています。

「尿石症の療法食」と「腎臓の療法食」を混同される場合がよくありますが、この2つはまったく別物です!

どちらの療法食を食べればよいのかは、必ず動物病院で相談してください。

近年、フードの値上がりが続き、療法食を続けるのが困難であるというお声もよくいただきます。

メーカーを変える、また市販品で同様の効果をうたっているものに変更される場合には、必ず動物病院と相談の上、変更後には尿検査などをおこなうことをお勧めします。

フードによって尿石症予防効果が高いもの、低いものがあります。

猫ちゃんがどの程度、尿石症を作りやすい体質なのかによって、尿石症をコントロールできるフードの種類は変わってきます。

膀胱炎が治癒したのでフードを市販のものに変更したら、すぐに再発してしまってさらに重症化してしまった、という例もよくあります。

外科治療

膀胱結石が大きく、自然に排出できない場合には外科手術の適応となります。

全身麻酔の上、膀胱を切開して結石を取り出す手術をおこないます。

術後は炎症や出血によって排尿が困難になる場合がありますので、尿道カテーテルを入れた状態で入院し、きちんと自分で排尿が出来るようになった状態で退院します。

オス猫で尿閉を繰り返すなど、尿道が細く十分な排尿が出来ず尿石症のコントロールが難しいと判断した場合、「会陰尿道路造瘻術」という手術をおこなうことがあります。

陰茎を切除し、メス猫のように尿道の出口を広げる手術となります。

腎結石や尿管結石の場合、閉塞していなければ経過観察となることがほとんどですが、閉塞をおこしてしまい腎障害に繋がる場合には、外科手術の適応となります。

しかし、腎臓や尿管の手術は大変困難であるため、専門的な手術がおこなえる二次病院へ紹介となる場合があります。

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