「替え歌みたい」坂本龍一氏の名曲を“K-POPが借用”で炎上…「リスペクトがない」と批判殺到のワケ

「替え歌みたい」坂本龍一氏の名曲を“K-POPが借用”で炎上…「リスペクトがない」と批判殺到のワケ

『戦メリ』とアレンジ曲の雰囲気とマッチしているのか?

 次に、IVEを条件付きでOKとした理由を説明しましょう。これは主に音楽的な問題です。

 まず、プロデューサーのデヴィット・ゲッタや、ソングライターチームが戦メリをサンプリングしたいと考え、そのような決断をくだすこと自体はOK。

 しかし、そうした結果、曲がどのように聞こえるかについては、意見が分かれるところだろう、と思います。


 映画『戦場のメリークリスマス』が描いた戦時下における人間の心の動きと、この曲が切っても切れない関係にあること。そして、たとえ映画を見たことがなかったとしても、坂本氏のメロディに、抑制的な静けさが漂っていること。

 これらを踏まえて、果たして『Superenova Love』という曲の雰囲気とマッチしていると言えるのでしょうか?

平原綾香『Jupiter』と同じく陳腐な言葉に変換

 今回の批判の中に、“メロディだけそのままのただの替え歌みたい”というコメントがありました。これはその通りで、今回『Supernova Love』が取った手法は、ホルストの『惑星』に日本語詞をつけた平原綾香の『Jupiter』(ジュピター)と同じなのだと思います。どちらも原曲に歌詞がない点も共通しています。


 問題は、ハーモニーやメロディのスケール感によって聞き手のイマジネーションや解釈に委ねていたものが、陳腐な言葉によって矮小化(わいしょうか)されてしまったことなのでしょう。

『Jupiter』が“いつでもあなたの味方だよ”というメッセージに堕してしまったのと同じく、『Supernova Love』は、戦メリを<私の体に触って 肌と肌を触れ合わせて>(Touch my body, skin on skin)といった思春期のムラムラに変換してしまったのです。

関連記事: