見落とされやすい脳梗塞の症状
隠れ脳梗塞は症状のない脳梗塞です。しかし、隠れ脳梗塞と判断された人の中には、実際は症状があったにも関わらず、自身・周囲が気づかずに隠れ脳梗塞と判断されていたケースもあります。
実際に脳梗塞による症状であったかどうかの判断はMRIなどの画像所見と合わせての評価が必要であり、脳神経内科や脳神経外科などの専門診療科でなければ、判断するには難しいと思われます。ここでは見落とされやすい脳梗塞の症状についてご説明します。
認知機能低下
脳梗塞の症状として最も見落とされやすい症状は認知機能低下です。認知機能低下は徐々に悪化していたとしても、本人・周囲ともに自覚しづらく、特に高齢者ではアルツハイマー型認知症や加齢性認知症などその他の原因でも認知機能の悪化は起こるため、脳梗塞の症状として気づかれにくくなりがちです。
ある日からおかしな発言がみられるようになった、物忘れがひどくなったなど、急性に認知機能が悪化して続く場合には脳梗塞の症状の可能性があり、注意が必要です。
歩行障害・軽度の麻痺
軽度の麻痺による歩行障害も見落とされることのある症状です。
高齢者では長距離歩行が難しいなど普段から歩行に対しての不安のある方が多く、発熱などにより歩行が困難になったことを経験されている方も少なくありません。
そのため、起床時などに下肢の脱力がみられた場合も年齢のせいと判断して脳梗塞を疑わない場合が少なくありません。
左右どちらかの脱力を自覚した場合には脳梗塞による症状の可能性があるため、注意が必要です。
隠れ脳梗塞の主な原因
隠れ脳梗塞は造影CTやMRIなどでは描出されない微小血管の障害を原因とする脳梗塞(ラクナ梗塞)が多いといわれており、高血圧が最大のリスク因子として知られています。
その他に2型糖尿病や高コレステロール血症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病、肥満などで発症しやすく、睡眠時無呼吸症候群、心房細動、慢性腎不全、軽動脈狭窄などで発症リスクが高くなるといわれています。
高血圧
高血圧はこれまでの複数の疫学研究で隠れ脳梗塞の最大のリスク因子として報告されています。また、薬物療法を含む積極的な医療介入を行い、血圧を120/80mmHg未満とすることで、隠れ脳梗塞や心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントの発症リスクが低くすることができるといわれています。
糖尿病・高コレステロール血症・メタボリックシンドローム
糖尿病や高コレステロール血症のある方、メタボリックシンドロームの方では隠れ脳梗塞を持つ方の割合が多いことがしられています。
糖尿病や高コレステロール血症などにより動脈硬化が進むと高血圧も合併しやすくなり、慢性腎不全や頸動脈狭窄などのその他のリスクとなる疾患も発症しやすくなります。また、肥満などにより睡眠時無呼吸症候群となれば、さらに心血管イベントのリスクが高まります。
バランスの取れた適度な食事、適度な運動などを行い、生活習慣を適切に保つことが重要です。
心房細動
心房細動は脳梗塞の大きな要因の一つであり、隠れ脳梗塞の原因になることもあります。心臓には全身から血液を受け取る右心房、肺に血液を送り出す右心室、肺から血液を受け取る左心房、全身に血液を送り出す左心室がありますが、心房細動では全身や肺から血液を受け取る心房が痙攣してしまうような状態となり、心房内に血液が滞留して血栓(血の塊)を作りやすくなります。この血栓がちぎれて飛んでいくことで脳血管を閉塞して脳梗塞を発症します。
心房細動の出現時には頻脈となって動悸を自覚することも多いですが、自覚症状がない場合もあるため、注意が必要です。
配信: Medical DOC