⚫︎加害側の親、被害側の親、いずれも問われる責任
ただ、ここで注意しなければいけないのは、被害者の親の責任です。
仮にケガをさせた子どもやその親に対する損害賠償請求が認められたとしても、被害者の親にも責任があると考えられます。
つまり、子どもである被害者がフルコンタクトの試合に出場することによってケガをするかもしれないということは予め十分に予想することができます。
その意味では、自分の子を危険な目に遭わせるような行動をとったという点で、被害者の親にも責任があるといえます。
したがって、実際に対戦相手の子どもやその親に対する損害賠償請求が認められる場合であっても、被害者の親にも落ち度があると考えられ、いわゆる「被害者側の過失」として過失相殺がなされる可能性が高いといえます。
つまり、空手に限ったことではありませんが、フルコンタクトの格闘技に出場させた子どもがどれだけ深刻なケガをした場合でも、被害者側の賠償請求は認められない可能性があるということです。
(※なお、今回の大会参加申込書を読むと、スポーツ保険は選手各自での加入が求められ、試合中の負傷・事故の責任を大会関係者が一切負わないとする記載がある)
——子どもにフルコンタクト空手を習わせている親に伝えたいことはありますか
先ほど述べたとおり、子どもの加害行為に違法性がないと判断された場合には損害賠償請求は認められませんが、この結果を被害を受けた子どもの自己責任として受け入れることができるでしょうか?
子ども自身がやりたいと思って習い始めたのではなく、親が子どもに習わせているのであれば、これを機にフルコンタクト空手を習わせることの意味について考えてみてはどうかと思います。
【取材協力弁護士】
岩熊 豊和(いわくま・とよかず)弁護士
2000年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。スポーツトラブル(スポーツ中の事故、体罰、パワハラ・セクハラ・いじめなど)に注力。交通事故、離婚、遺産相続(遺産分割・遺言・遺留分)、民事事件全般も取り扱う。公益財団法人日本スポーツ協会ジュニアスポーツ法律アドバイザー。スポーツ問題解決の目標は「スポーツを楽しむという原点を取り戻すこと」。
事務所名:岩熊法律事務所
事務所URL:https://kumaben.com/
配信: 弁護士ドットコム