人を、街を、湖を、つなげていく
行動力のかたまりにも思える梅原さんの口調は、終始穏やかだ。「俺はこんなすごいことやってる」なんてそぶりは絶対しない。よそ者のわたしはその様子をこっそり、「京都人らしいなぁ」と思ったりした。熱いパッションはあるけれども、大げさに騒ぎ立てたり盛って語ったりは決してしない。「美学」って言ってもいいのかもしれない。
「地域を変える」なんてことも言わない。でもきっと実際、変えている。ポンセには仲間も来るし、近所の子どもやお年寄りも来る。この通りで夜まで開いているお店は数軒しかないそうで、ポンセもそのひとつ。このまっすぐ伸びる道にポンと明かりがつき、きっとみんなのあたたかな居場所になっている。梅原さんのこの押し付けがましくない接客が、居心地よくさせているのだろうな。
チャイニーズカレーは花椒の香りがふわっとただよう。おいしい。毎週必ず訪れる常連さんもいると聞いて納得する。ちょっと、くせになっちゃう味だ。開放的な窓際でカレーをのんびり食べながらすぐそこにある琵琶湖のことを思う。湖の周りってすごく気持ちよさそうだ。
梅原さんは「ちょうどいい暮らし」をコンセプトにする会社を持ち、さらに「Otsu Living Lab(大津リビングラボ)」という任意団体にも所属している。それぞれ、年に一度、琵琶湖岸でマルシェが集合する大規模なイベントを開催したり、湖の活用に関する調査や実証実験をしたり。店の前の道と湖を繋げる試みも控えているそうだ。街で湖で、常に動いている。その原動力になる静かな情熱がすごくいいな。そんなこと言っても、彼はとくにうれしくないだろう。だから、口には出さず、そっと好ましく思った。
気づくとずいぶん時間が経っている。
お話に聞き入ってしまい、すっかり長居してしまいました。
ありがとうございます。ごちそうさまでした!
ポンセにお別れを告げ、湖に向かう。路面電車の小さな踏切を渡り、目の前に広がったのは、まるで海みたいに広い、琵琶湖なのだった。
湖がある暮らしって穏やかですてきだ。近頃は移住者も多いと聞く、この大津という街。「街を変える」なんて一朝一夕でできることではない。違いを抱えたひとりひとりがそれぞれの立場で思いを持って丁寧につながって行動を重ねていく。できれば、おもしろがって。
きっと、これからもじわじわと大津がさらにおもしろい場所になっていく。
たのしみだな。広い琵琶湖をしばらく眺め、帰りました。また来ます!
店舗情報
スパイスランド ポンセ
滋賀県大津市中央2丁目4−23
11:30〜14:00 売り切れ次第終了
18:00〜22:00 フードラストオーダー
日曜の夜営業はなし
定休日 月曜日
※臨時のお休みはInstagramをご参照ください。
https://www.instagram.com/ponce_dub_thespices/「アイスムマガジン [大津特集]」を滋賀県大津市内で配布中!
中川正子さんのコラムのほか、膳所駅・大津駅周辺のおすすめスポットやアイスム編集部が厳選したレシピが掲載されたフリー冊子「アイスムマガジン [大津特集]」を滋賀県大津市内で配布しています。(スパイスランド・ポンセさんのカレーの表紙が目印!)
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配信: アイスム
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