国からお金を借りる方法を知っていますか? 公的融資制度を解説

国からお金を借りる方法を知っていますか? 公的融資制度を解説

国からお金を借りることができるということをご存知でしょうか?

国が行っている貸付は、低所得者や母(父)子家庭・高齢者を対象としたものや、事業者を対象としたものなど、さまざまです。

今回は、生活に困っている場合、子供の教育費が足りない場合、事業資金に困っている場合の、公的借入れ、つまり国からお金を借りる制度や条件などをまとめてみました。

お金を作る全般に関しては、以下の関連記事をご参照ください。

1、生活費に困っている場合の公的借入れ

会社が突然倒産した場合や、病気によって突然失業してしまった場合には、その後の生活費の工面にも窮してしまうことが少なくありません。

国は、このようなケースに備えたセーフティーネットのひとつとして、生活再建に必要な費用を貸し付ける仕組みを用意しています。

(1)生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、低所得者、高齢者、障害者が生活に必要なさまざまな費用の工面に困ってしまった場合に融資を受けられる制度です。

①生活福祉資金の種類

生活福祉資金の種類は、大きく分ければ、総合支援資金、福祉資金、教育支援金、不動産担保型生活資金の4つに分類されています。

その概要は、下の表のようにまとめることができます。

資金の種類

限度額

借入金の使途など

総合支援資金

生活支援費

2人以上:月20万円以内

単身:月15万円以内

生活再建までに必要な費用

住宅入居費

40万円以内

敷金・礼金など住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用

一時生活再建費

60万円以内

生活を再建するまでに、一時的に必要かつ、日常生活費まで賄うことが困難である費用

福祉資金

福祉費

580万円以内で、用途に応じて上限目安を設定

生業を営むために必要な経費、住宅の増改築、介護サービスなどを受けるために必要な経費

緊急小口資金

10万円以内

緊急かつ、一時的に生計の維持が困難な場合の費用

教育支援金

教育支援費

高校:月3.5万円以内

高専・短大:月6万円以内

大学:月6.5万円以内

(特に必要な場合は各限度額の1.5倍まで貸し付け可能)

低所得者世帯の子供が、高校、高専、大学などに修学するために必要な経費

就学支度費

50万円以内

低所得者世帯の子供が、高校、高専、大学など入学する際に必要な経費

不動産担保型生活資金

不動産担保型生活資金

土地評価額の70%程度

月30万円以内

低所得の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活費を貸し付ける資金

要保護世帯向け

不動産担保型生活資金

土地および建物の評価額の70%程度(集合住宅は50%)

生活扶助額の1.5倍以内

要保護の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活費を貸し付ける資金

(参考:全国社会福祉協議会)

②生活福祉資金の受付窓口・融資条件・必要書類

生活福祉費は、お住いの市区町村の社会福祉協議会に相談して申し込むことができます。

また総合支援資金、緊急小口資金は、原則として「自分の収入だけでは必要な生活費を工面することの難しい人」を対象とした支援制度です。

総合支援資金・緊急小口資金の融資を受けられるのは、原則として、次の条件に該当する人です。

低所得者世帯(市町村民税非課税程度)
高齢者世帯 (65歳以上の人)
障害者世帯 (身体障害者手帳、療養手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人)

生活困窮者のための支援制度としては生活保護がよく知られています。

しかし、突然会社が倒産した人のような場合には、給料の未払いなどで生活費の工面が難しい状況に追い込まれながらも、持ち家があるなどの事情で生活保護を利用できない場合もあり、セーフティーネット(安心安全のための社会保障制度)に隙間が生じてしまいます。

その意味で、総合支援資金は、この隙間を埋めるため仕組みといえるでしょう。

そのため、生活福祉資金による融資を受ける場合には、あわせて自立相談支援事業を利用することが、条件となるのが原則です。

なお、融資を受ける際に必要となる書類は、以下のとおりです。

運転免許証、健康保険証など、本人確認書類
給与明細、源泉徴収票、通帳の写しなど所得がわかる書類
税金の納付状況がわかる書類
債務状況がわかる書類
連帯保証人の所得がわかる書類
その他、社会福祉協議会が必要とする書類

③生活福祉資金の返済条件

生活福祉資金の返済条件は、それぞれの貸付内容によって、下の表のとおりに異なります。

生活福祉資金の種類

据置期間

返済期限

総合支援金

生活支援費

最終貸付日から6ヶ月以内

据置期間経過後10年以内

住宅入居費

貸付の日から(生活支援費と合わせて借りている場合は生活支援費の最終貸付日から)6ヶ月以内

一時生活再建費

福祉資金

福祉費

貸付日(分割の場合は最終貸付日)から6ヶ月以内

据置期間経過後20年以内

緊急小口資金

貸付日から2ヶ月以内

据置期間経過後12ヶ月以内

教育支援資金

教育支援費

卒業後6ヶ月以内

据置期間経過後20年以内

就学支度費

不動産担保型生活資金

不動産担保型生活資金

契約終了3ヶ月以内

据置期間終了時

要保護世帯向け

不動産担保型生活資金

(2)生活福祉資金の審査中の生活費も借りられる

上で紹介した生活支援のための融資制度は、申込みから貸付の実施まで一定の期間が必要となってしまいます。

審査など役所内での手続きに時間が必要となるからです。

とはいえ、失業などが原因で生活苦に陥ってしまった場合には、「失業したことで、来月の家賃すら支払えない」ということも十分考えられます。

そのようなケースにおいては、生活福祉資金による貸付を申し込んでいること、申込者名義の銀行口座があることを条件に、国による正式な貸付が実行されるまでの期間の「つなぎの生活費」についても「臨時特例つなぎ資金貸付」を利用することで、10万円までを限度に無利子で国から借りることができます。

臨時特例つなぎ資金貸付の申込窓口も、お住まいの地域の社会福祉協議会となります。

2、子どもの教育費が足りないときの公的借入れ

高校、大学などに進学させてあげたいけどお金が足りない。

学費が高く困っている場合にも、国などの公的機関からの借入を利用することができます。

(1)奨学金(日本学生支援機構)

奨学金は、経済的な理由で就学が困難な場合の救済手段としてよく知られた制度です。

奨学金として最もスタンダードなのは、日本学生支援機構(旧日本育英会)が行っている奨学金事業ですが、高校・大学だけでなく、企業や自治体などが独自に行っている奨学金制度もあります。

①奨学金の種類 ~給付制と貸与制(有利子・無利子)

奨学金には、給付制(返済なし)のものと、貸与制(返済あり)のものとに分けることができます。

また、貸与の場合には無利子の奨学金と、有利子の奨学金とに分かれます。

給付制の多くは、特に学業・スポーツそのほかの何かしらの領域で優れた業績(成績)を残している学生向けの奨学金です。

したがって、成績審査などが必須となる場合がほとんどです。

他方、貸与制の場合には、無利子のものは、成績などの審査基準(学校などからの推薦基準)があることが一般的ですが、有利子のものは、経済的な条件(保護者の所得水準)を満たせば融資を受けられるものが多いといえます。

②奨学金破産に注意

近年では奨学金を利用して進学する人が非常に増えています。

その他方で、奨学金の受給者増加にともない、学校卒業後に奨学金の返済に行き詰まってしまう人も増えています。

貸与制奨学金を利用するときには、連帯保証人を立てる人が多いのですが、奨学生が奨学金を返済できなくなったことで、連帯保証人も一緒に自己破産するという「奨学金破産」が増えていることも社会的な問題になりつつあります。

なお、このような事態をうけて、日本学生支援機構の奨学金を借りる際には、連帯保証人を立てるのではなく、保証会社による機関保証を選択できるようにもなっています。

奨学金の貸与を受ける場合には、万が一の場合のリスクもしっかり考えておきたいものです。

(2)国の教育ローン(教育一般貸付)

いわゆる「国の教育ローン」は、「日本政策金融公庫」が国民生活事業として行っており、入学、在学中の費用の工面を目的としたローンです。

申込みができるのは、「融資の対象となる学校に入学、在学する子供の保護者(生計を維持している人)」で、「子供の人数に応じた世帯収入の制限額を超えない人」となっています。

子供の人数に応じた世帯収入の制限額は以下のようになっています。

子供の人数

世帯収入の上限

(給与所得者)

世帯年収の上限

(事業所得者)

1人

790万円

590万円

2人

890万円

680万円

3人

990万円

770万円

4人

1090万円

870万円

5人

1190万円

970万円

(日本政策金融機構から引用)

扶養する子供が2人以下であれば、収入条件を超える年収額がある場合でも、次の条件を満たすときは、所得制限基準額が970万円(事業者は770万円)まで緩和されます。

勤続年数(営業年数)3年未満
住居年数が1年未満
世帯のいずれかの人が自宅外通学(予定)者
借入申込人、またはその配偶者が単身赴任
融資の目的が海外留学資金
借入申込人の年収(所得)に占める借入金返済の負担率が30%超
親族などに「要介護認定」を受けている人がいて、その介護費用を負担している
大規模震災の被害者となった

融資限度額は、子供1人につき350万円までとなっています。

海外に3ヶ月以上在籍するための資金として借りるときは、450万円まで融資を受けられます。

国の教育ローンは、民間の金融機関よりも遙かに低金利で融資を受けられるのも大きなメリットです。

2019年11月1日現在の適用金利は、年1.66%の固定金利となっています。

また、奨学金とは異なり、子供の保護者が借主なので、学力に関する条件はありません。

申込みに必要な書類は、

借入申込書(教育ローンコールセンターへ請求)
住民票の写し、または住民票記載事項証明書(世帯全員続柄を含む)が記載されているもの(原本)
運転免許証またはパスポート
源泉徴収票または確定申告書(控え)
預金通帳(最近6ヶ月分以上)
※入学資金の場合は合格を確認できる書類

となっています。

融資の申込みは、インターネット、郵送、来店などの方法で行うことができます。

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