フジテレビだから仕方ない? 日本シリーズの裏で起きた「取材パス剥奪」の法的問題

フジテレビだから仕方ない? 日本シリーズの裏で起きた「取材パス剥奪」の法的問題

横浜DeNAベイスターズが「日本一」に輝いたプロ野球・日本シリーズの裏で、日本野球機構(NPB)がフジテレビの「取材パス」を剥奪するという「珍事」が起きていた。

ことの発端は、フジテレビが日本シリーズの時間帯に、米大リーグのワールドシリーズのダイジェストを放送したことだったという。ドジャース・大谷翔平選手の活躍に世間の大きな注目が集まっていたころだ。

報道によると、NPB側は「信頼関係が著しく毀損された」(から)と説明したという。ネット上ではフジテレビが嫌われているのか、取材パス剥奪について肯定的な意見も目立つが、法的問題はないのだろうか。西山晴基弁護士に聞いた。

●「違法とまではいえない」ことになりそうだが・・・

――NPBがフジテレビから取材パスを剥奪したことに法的な問題はないのでしょうか?

正当な理由なく取材や放送を拒否することは、テレビ局の「報道の自由」を侵害するとして、問題になる可能性があります。これに加えて、今回のように、特定のテレビ局だけの取材や放送を拒否するのは、独占禁止法にも抵触する可能性があります。

――独占禁止法では、どのような問題があるのですか?

独占禁止法の「取引拒絶」等として問題になる可能性があります。

プロ野球の放送権は、NPBや各球団が持っています。そのため、テレビ局がプロ野球を放送するには、NPBや球団から放送権の許諾を得る必要があります。

取材パスの剥奪は、放送権の許諾自体の拒絶ではないですが、取材パスがなければ、テレビ局は球場内で取材ができなくなるため、事実上、放送権の許諾を拒絶したものとして、法的に問題になる可能性があります。

――独占禁止法違反として違法になるのでしょうか?

独占禁止法違反となるには、取引拒絶等によって「相手の事業活動の継続が困難になるおそれ」が必要です。今回の行為は、相手がフジテレビという大手キー局だったこともあり、そこまでの影響があったとは言い難いと思われ、違法とまではいえない、という結論になりそうです。

ただし、今後も同様の行為を継続したり、プロ野球の試合全般の放送を拒絶したりすれば、影響が大きくなり、違法となる可能性は高まるでしょう。

――報道によると、NPBはフジテレビへの取材パスの没収を解除し、「協力体制を固めていく」方向でフジテレビと話し合いを行う意向を示しています。今後の話し合いの中で、他に問題となりうることはありますか?

もしNPBがフジテレビに対して「日本のプロ野球が中継されている時間帯は、米大リーグやワールドシリーズを放送しないように」などと求めるようなことがあれば、さらなる独占禁止法上の問題も生じるでしょう。

【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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