長女の不登校をきっかけに、開業を決意
――さわ先生がクリニックの開業を決めた理由も、長女の不登校に関係がありますか?
さわ 長女が完全に不登校状態になった当時、私は長女を家に1人で置いておけないので職場に連れていったりしていたんです。しかたないことではあるけれど、勤務先に対する申し訳なさがありました。
もともと将来的に開業を考えてはいたんですが、今自分のクリニックを開業すれば、長女を職場に気兼ねなく連れていけるだろうと、思いきって開業を決意しました。
――先生の両親は長女の不登校について受け止めてくれているのでしょうか。
さわ 私の両親は、長女が登校しぶりをし始めた当初は「親が学校につき添って連れていくべきだ」という考えでした。父はもともと内科医なんですが、発達障害は比較的新しい概念なので、父が医学生時代には学んでいなかったのでしょう。
私がクリニックの開業を決めたときも初めは両親から「仕事している場合じゃない、子どもの登校につき添うべき」という理由で反対されましたが、最終的には2人とも応援してくれました。
学習面では厳しい両親ですが、2人ともとても愛情深い人たちです。父は本を買って、発達障害について勉強してくれたようでした。
今、両親は長女を無理に学校に行かせようとはしないでそばにいてくれるし、一緒に留守番をしたり、長女が行きたいと言えば習い事などや外出に連れて行ってくれます。私は仕事ばかりしているので、2人の娘の子育ては両親に支えてもらっています。
――二女はどんなふうに過ごしていますか?
さわ 二女は長女と同じ小学校に入学したんですが、長女が不登校のためか二女も学校に行きたがらなかったため、1年生の夏休みにほかの小学校への転校を私から提案して見学し、秋に転校しました。二女は文字を書くことが極端に苦手で、学習内容を理解はしていても学力が伸びないところがありました。最近受診したところ、学習障害(LD)という診断を受けました。そのため学力の面では難しさはあるものの、転校した学校では、必要に応じて学習をサポートしてくれる先生がいるので、二女はそのサポートを受けながら、楽しく学校に通っています。
お話・写真提供/河合佐和先生、取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
長女が幼稚園のころ、送迎をママ友たちと手分けして行ったり、さわ先生の自宅で親子数組が集まって食事をしたり、おふろに入ったりと、みんなで子育てを助け合っていたそうです。さわ先生は 「シングルマザーで苦しいこともあったけれど、友人たちに恵まれたから、つらいワンオペ育児ではなかったです」と話しています。
後編では診察室でのエピソードやYouTube発信の思いなどについて聞きました。
河合 佐和先生(かわい さわ)
PROFILE
児童精神科医。精神科専門医、精神保健指定医、公認心理師。
1984年三重県生まれ。藤田医科大学医学部を卒業後、勤務医を経て2021年に名古屋で塩釜口こころクリニックを開院。開業直後から予約が殺到し、現在も毎月約400人の親子の診察を行っている。これまで延べ3万人以上の診察に携わってきた。
2人の娘を育てるシングルマザー。長女が不登校となり、発達障害と診断される。
●記事の内容は2024年10月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
配信: たまひよONLINE