3、親にさせられた借金の処理方法
親に借金をさせられた場合でも、ほとんどのケースでは子供自身に返済義務があることがお分かりいただけたと思います。
とはいえ、親のために借金に苦しめられるのは納得できない場合も多いことでしょう。親にさせられて借金はどのようにして処理すればよいのでしょうか。
(1)返済した後に親に求償する
法律上の返済義務がある場合、貸金業者に対しては子供自身が返済する必要があります。きちんと返済した上で、親に対してはそのお金の返還を求めることを考えましょう。
親が「後で返す」と約束していた場合は、その合意を根拠として返還を請求できます。
このような約束がなかった場合でも、不当利得として返還を請求することが可能です(民法第703条、第704条)。
もっとも、子供に借金をさせるような親はお金に困っていることがほとんどですので、実際には全額を取り戻すことは難しいことが多いでしょう。無理に返還を求めると、親子間でさらなるトラブルが発生する可能性が高いので、少しずつ返してもらうようにする方が得策であると考えられます。
ただし、親子には扶養義務があります(同法第877条1項)ので、生活費を援助するために借金したお金を渡した場合は、返還を求めることができない可能性もあることにご注意ください。
(2)返済できない場合は債務整理
子供も借金を返済できない場合は、債務整理を検討すべきです。納得できないからといって借金を放置していると、子供自身が貸金業差から支払督促や裁判を起こされ、最終的には給料や預金口座などを差し押さえられることになります。
借金問題は債務整理で解決できますので、適切な方法で解決を図ることが大切です。
債務整理の方法やデメリットについては、後ほど「5、債務整理の種類とデメリット」で解説します。
4、子供に借金させる親への対処方法
親にさせられた借金は返済や債務整理で処理するとしても、今後はどのように親に対処すればよいのかは悩ましい問題です。
子供に借金させる親とは縁を切りたい人、困っている親を何とか助けてあげたい人など、さまざまなケースがあると思いますが、実行可能な対処法を順に考えていきましょう。
(1)借金してまで親を助ける義務はない
まず、親から借金を頼まれたとしても、それに応じる義務はどこにもないということを押さえておいてください。
先ほどもご説明したように、親子には扶養義務がありますが、これは自分と同じ生活水準の生活を親(子)にも営ませるように支援する義務のことを指します。子供に経済的な余裕がある場合に親に金銭的な援助をするのは結構ですが、自分の生活を犠牲にしてまで親にお金を渡す必要はありません。
したがって、親から借金を頼まれた場合には、きっぱりと断って構いません。
とはいえ、親から執拗に借金を頼まれて困るということもあるでしょう。
そんなときでも、親子の縁を切る法的手段はありません。親子の交流を断絶することによって事実上の縁を切ることは考えられますが、たとえ内緒で引っ越しをしても、住民票の調査などによって居場所を突き止められてしまうケースが多いです。
ケースにもよりますが、できれば以下のような方法で、親が抱えている問題を一緒に解決してあげることをおすすめします。
(2)親の家計を見直す
まずは、親の家計を一緒に見直すことです。
浪費があれば、月平均でどれくらいの金額を使っているのかを割り出して指摘すれば、反省してくれることもあります。
目立った浪費がないとしても、削減できるコストがあるケースは多いものです。携帯・スマホの料金や各種保険料などは、若い人なら安価なプランを調べて節約する術に長けている人が多いですが、中高年になると情報収集がおっくうになり、高い費用を支払い続けている人が多くいます。削減できる費目を一緒に探して、節約方法をアドバイスしてあげるとよいでしょう。
場合によっては、住居費を節約するために同居を申し出るのもよいかもしれません。同居すれば、親の行動を監視して浪費を防止することもある程度は可能となるでしょう。
(3)親の事業計画を見直す
親が事業不振でお金に困っている場合は、事業計画を一緒に見直してあげましょう。古くから零細な小売店や飲食店を営んでいる場合は、大手企業のチェーン店の出店により売上げが低下しており、挽回するのは難しいことも多いと考えられます。
赤字が続くようであれば、閉店を勧めるのもひとつの方法です。その場合、可能であれば次の働き口を紹介したり、一緒に探してあげるとよいでしょう。
(4)親にカウンセリングを勧める
親にギャンブル依存症や買い物依存症、その他の浪費癖がある場合は、専門のカウンセリングを利用するように勧めてみましょう。特に浪費癖がない場合でも、お金に困って借金を重ねている人は、強いストレスなどの精神的な問題を抱えていることが多いものです。その場合も、カウンセリングによって状況の改善につながることが期待できます。
親にカウンセリングを勧めても利用しない場合は、子供が予約を取って、親を一緒に連れて行くようにするとよいでしょう。
(5)親にも借金がある場合は債務整理
子供に借金させる親のほとんどは、親自身にも借金があり、返済に苦しんでいるものです。
そんなときは、親にも債務整理を勧めて借金問題の根本的な解決を図るべきです。
債務整理をするように親を説得するには、まず子供が債務整理の方法やデメリットを知っていなければなりません。この点について、次項で解説します。
配信: LEGAL MALL